南風原@東大教育心理です。 *** JXE誌「検定」特集号論文の紹介(9) *** Interpreting Statistical Significance and Nonsignificance. (by William D. Schafer, Journal of Experimental Education, 1993, 61, 383 -387.) Measurement and Evaluation in Counseling and Development (MECD) 誌の Editor の Schafer による,先の6論文に対する討論です。 論文の冒頭に,「MECD 誌では,たとえ無作為化を伴わない場合でも,検定結果 を報告した論文を掲載する」と宣言しています。これに続いて「ほとんどの理 論的研究では,まだ生まれていない人まで含めて一般化したいのだから,その 母集団からの無作為抽出は無理」という意味のことを言っていますが,このこ とからなぜ上記の方針が出てくるのかは不明です。 検定結果の他に効果の大きさの推定値も示すように,という編集方針も示され ています。これに関連して,効果の大きさは使用した測度の信頼性,妥当性に 依存すること,また(実験群に施される)処遇自体が改善されればそれに伴っ て増大することを指摘しています。 また,メタ分析的視点から,個々の研究結果における「有意か否か」の決定に それほど重きをおくべきでない,ということも言っています。 Shaver (JXE-3) が meaningless exercize と一蹴した検定力分析については, 特に有意とならない結果の解釈において意味があるとしています。検定力を規 定するものとして,標本の大きさだけでなく,実験計画にも触れているところ は評価できるのですが,初めに触れた「無作為化を伴わない場合」に,「検定 力」なる「確率」が,具体的に何の確率をさすのか,は尋ねてみたいところで す。 あと,追試の重要性については他の論文も異論のないところですが,追試研究 の雑誌掲載については,必ずしも前向きでないようです。それらはデータベー スなどの形で利用できれば十分であり,雑誌に掲載すべきは,追試をするに値 するようなオリジナルな研究である,としています。 ==================== 南風原朝和 (はえばら ともかず) tomokazu (at) tansei.cc.u-tokyo.ac.jp 〒113 文京区本郷7-3-1 東京大学教育学部 TEL: 03-5802-3350 FAX 03-3813-8807 ====================
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