南風原さん,JXE誌「検定」特集号論文の紹介をありがとうございまし た。 大変におもしろく読ませていただきました。各論文にたいする南風原さんの コメント(とくに著者の主張にある矛盾点の指摘)が私には愉快でした。 私がもっとも興味深く思ったものは,最終回に紹介されたAsher のコメン ト論文でした。 >「無作為化を伴わない検定の結果は無意味である」という主張に対しては, > We generally use sampling statistics in a subjunctive comparison >と述べています。つまり,我々の検定(などの標本理論の)利用は(仮に無作 >為標本であったとしたら,というような)仮想上の比較に過ぎないから,実際 >のデータ収集における無作為性についてはそれほど問題にしなくてよい,とい >う考えです。 > >もしそのように考えるとしたら,検定の前提条件をチェックすることの意味と >か,前提条件からの逸脱に対する頑健性の意義とか,検定力の意味とかも,実 >際の無作為性を前提とした場合とはだいぶ変わってくると思いますが,その点 >については何も言及していません。 Asherという人はものすごいことをいうのですね。 もしそのように考えて統計的検定を使っているとしたら,これは許せないです よ。標本の無作為性についてはそれほど問題にしなくてよいとなると,検定を しても,そもそもp値が意味をなさないので,検定自体が無意味ですよね。とこ ろがその無意味なp値をふりかざして,結果が統計的に有意であるとかいって, 自分の主張は科学的な根拠にもとづいていると見せかけるのですからね。 いやぁー,驚きました。 実は,私の職場にはJournal of Experimental Educationがありません。い ずれコピーをとりよせてじっくり読みたいと思っています。 読んで楽しく,ためになった論文紹介,ほんとうにありがとうございました。 橘 敏明 愛知県コロニー発達障害研究所 b41896u (at) nucc.cc.nagoya-u.ac.jp
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