南風原@東大教育心理です。 堀さん@香川大学からの記事[fpr 112]の中に,SPSS による検定力出力の例 がありました。 下の表は,その一部を編集したものです。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− Source of Variation F Sig of F Noncen- trality Power −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− WITHIN CELLS A 35.37 .000 70.737 1.000 B 2.63 .131 2.632 .321 A BY B 26.95 .000 53.895 1.000 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− この中の Power については,Observed Power at the .0500 Level という説明 がついていますが,このような Power を算出することにどういう意義があるの かが,よく分かりません。 検定力は分析モデル,サンプルサイズ,有意水準,そして両側検定か片側検定 かが決まれば,あとは母数(母集団における効果の大きさ)の関数となります が,上記の検定力が Observed Power であるということからすれば,標本デー タによる母数の推定値で検定力関数を評価したものということでしょう。 だとすると,p値(上の表では Sig of F)と Observed Power の間にかなり明 白な関係が生じ,p値に加えて Observed Power を算出・報告することの意義 が感じられないのです。 たとえば,簡単のためにt検定を例にとって,有意水準 .05 の両側検定で p=.05 となるときの Observed Power を計算してみると,下に示す表のよう にほぼ .50 という値になります。つまり,ぎりぎり有意になるようなデータで は,Observed Power という指標は常に,ほぼ 1/2 になるということです。 同様に,p<.05 で有意になるときは,Observed Power>.50 となり, p>.05 で有意にならないときは,ほとんどの場合,Observed Power<.50 と なります。(上の表でも,p=.000 で Observed Power=1.000,p=.131 で Observed Power=.321 となっています。) このため,「検定力は十分に高いにもかかわらず有意差が得られなかった。し たがって,差は十分に小さいと言える」というような,検定力分析がよく引き 合いに出される状況などでは,この Observed Power は使えないことになりま す。 それでは,p値と上記のような単純な関係にある Observed Power にどのよう な利用価値があるのだろうか,というのが私の疑問です。 各群のn 検定力 5 0.52672 10 0.51136 15 0.50721 20 0.50529 25 0.50418 30 0.50346 35 0.50295 40 0.50257 45 0.50228 50 0.50205 100 0.50103 150 0.50070 200 0.50054 250 0.50044 300 0.50037 350 0.50032 400 0.50029 450 0.50026 500 0.50024 ==================== 南風原朝和 (はえばら ともかず) tomokazu (at) tansei.cc.u-tokyo.ac.jp 〒113 文京区本郷7-3-1 東京大学教育学部 TEL: 03-5802-3350 FAX 03-3813-8807 ====================
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