[fpr 177] factor score

鈴木督久

鈴木@日経リサーチ です.

私も質問していいでしょうか.


 南風原さん:

>>因子得点を算出するための重みの安定性のことを考えると,
>>粗点の合計も悪くないように思うのですが。

これについて,もう少し教えていただけますでしょうか.まず

(1)これは心理学のデータに限らず一般的なことでしょうか.
(2)因子得点と粗点合計は,安定性のことを考えたら「同程度」ということ
      なのか,それともシンプルであることを加味したら粗点合計が「積極的
      に」望ましい,ということでしょうか.


私は因子得点をよく使うので,松田さんのような感想もうなずけます.変数の
クラスタリングを目的として因子分析を使うのはよくあるのでしょうが,変数
の部分集合を粗点合計(ないし標準化得点を合計)するなら,それぞれの第1
主成分でいいのではと思います.第1主成分と粗点合計の相関係数,あるいは
似たことですが,単純構造をうまく(?)得られた因子得点と粗点合計の相関
係数は 0.9前後になることが多いので,どちらも同じものを測定してるような
ものですが,すべての変数の重みが1である合成変量(粗点合計)と,同じ程
度の安定性だったら,少し考えなおして勉強します.

たしかに重みは調査のたびに少し変化します.変数間で大小関係さえ変わるこ
ともあります.しかし因子パタンまで変わることは,さまざまな初期解も比較
したうえで因子モデルを作っていたら,ほとんどないように思いますが,どう
でしょうか.

重みは簡単に変化しますが,それが著しい場合というのは,私の経験では,
  [1] サンプリング方法に変更があった
  [2] 実査方法(データ収集方法)に変更があった
という場合でした.これらは異質の対象者に調査したり,違う意味のデータを
対象にしたことになるので,別の問題だと思います.それ以外の変化は,重み
の不安定さではなく,調査対象や現象が変化した,あるいはデータ自体が因子
モデルに適合していないのだと解釈してきました.

心理学の例ではありませんが,比較的心理に近い(?)かも知れない「イメー
ジ調査」のデータでは,この数年間,金融機関に対するイメージが変化してい
ます.これに気がついたのは,担当者がまさに十年前の重みで一定にしたまま
で,毎度の如く恒例的分析をしていたら,最近どうもおかしな結果になるとい
うので発覚したものです.たしかに重みを固定して信じるのはよくないという
例ですが,それと因子得点の不安定性とは,また少し違う気がします.だから
重みは1でいいというのも少し違う気がして,ここが質問したいところです.

(3)重みは不安定でもいいのではないでしょうか

調査のたびに重みは変化してしまいます.しかし,それは回答のちょっとした
変化でも変わってしまうので,気にしないできました.重みは因子得点を回帰
推定する際の計算のためだけに使う程度に考えてきました.因子得点には回帰
効果もあるでしょうが,案外,安定して使えるように感じています.重みは安
定していないけれど,因子パタンが変わる程ではない.もともと相関の高い変
数群の重みですから,多重共線性に似た問題も生じるだろうと想像します.

社内的には重みベクトルは解釈しないように徹底しています.重みベクトルを
解釈しようとすれば,いつかかならず間違いを犯す.しかし,構造ベクトルを
解釈する限り,間違える余地はないと思います.重みベクトルは相関のある変
数群から,合成変量を計算するためのもので,たまたま値が変わることがある
けれど,その変化は解釈に値するものではないし,してはいけない.また.そ
の変化(不安定性)は因子得点を不安定にするものでもない,注意すべきは構
造ベクトルの変化,さらにそれによる因子パタンが変化した時である.そう考
えてきましたが,どうなのでしょうか.

簡単に書くつもりが,長くなってしまい申し訳ありません.

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