南風原@東大教育心理です。 鈴木さん@日経リサーチ [fpr 177] wrote: >> 私も質問していいでしょうか. >> >> 南風原さん: >> >> >>因子得点を算出するための重みの安定性のことを考えると, >> >>粗点の合計も悪くないように思うのですが。 >> >> これについて,もう少し教えていただけますでしょうか.(中略) >> >> たしかに重みは調査のたびに少し変化します.変数間で大小関係さえ変わるこ >> ともあります.しかし因子パタンまで変わることは,さまざまな初期解も比較 >> したうえで因子モデルを作っていたら,ほとんどないように思いますが,どう >> でしょうか. 「因子パタンまで変わることは・・・ほとんどない」というのが, 「変数のクラスタリングはほとんど変わらない」という意味でした ら,まさにその安定した部分のみに頼るのが粗点合計方式というこ とですよね。 粗点合計と因子得点の得失を考えるときには,こうした安定性の問 題のほかに,得点の解釈の妥当性の問題がかかわってくるように思 います。 まず直交解の場合,因子得点は互いに無相関となるように計算され ます。これに対し,粗点合計のほうは一般には無相関とはならず, 時にはかなり高い相関をもちます。一方,因子や尺度に対する解釈 は,因子の直交性を十分ふまえてなされる場合もあれば,明らかに 共通成分を含み互いに相関するような名称が因子に付けられる場合 もあるかと思います。 直交している因子得点に,共通成分をもち相関をもつような解釈を 与えたり,逆に相関をもつ尺度得点を完全に無相関のように解釈し たりするのは,解釈の妥当性のためには,できるだけ避けるべきだ と思います。 斜交解の場合は,因子得点も粗点合計も互いに相関をもちますから, 上の問題はありませんが,解釈の容易さに関してはどうでしょうか。 因子得点をその推定のための重みから解釈することについては鈴木 さんからも問題点が指摘されていますが,因子構造をもとに解釈す るのも,少数の変数の粗点合計の解釈に比べれば,難しいように思 います。解釈の容易さが解釈の明快さにつながれば,それによって 解釈の妥当性が向上することが期待できます。 このような解釈の妥当性の観点からも,私は「粗点合計も悪くない」 と考えているのですが,どのような場合でも粗点合計のほうが良い ということではありません。因子解釈の内容やサンプルサイズ等を ふまえて,個別に判断する必要があると思います。 鈴木さんから出された質問に対する直接的な答えにはなっていませ んが,一応のリプライとさせていただきます。鈴木さんの質問は多 岐にわたるものですので,他の方からもお考えを伺えればと思いま す。
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