[fpr 187] factor score

豊田秀樹

豊田@立教社会です

Tokuhisa Suzuki <KGH00763 (at) niftyserve.or.jp> さんは書きました:
>鈴木@日経リサーチ です.
> 斜交解の解釈は,先生方はどうしているのでしょうか?.因子構造の解釈は
>とても難しくなりますね.逆に,因子パタンの解釈は(プロマックス回転の場
>合),単純構造が強調されるので,とても容易ですね.
> 斜交解の場合は,「粗点合計に比べて因子構造の解釈は難しい」というよ
>り,両方とも単純構造を失うという点において,ともに「難しい」ように思い
>ます.容易なのは因子パタンだけですね.もちろん粗点合計の方に単純構造が
>維持されていれば話は別ですが,そういう時は斜交因子の構造も単純になって
>いるのでは?.
> 柳井・豊田・前田「原因を探る統計学」では,プロマックス回転の解釈とし
>て因子パタンしか使っていません.因子パタンだけで解釈していいのだと御墨
>付きをもらえれば,私はとても気持ちが楽になるのですが,いまのところ自信
>がないので,因子パタンと因子構造の両方をにらんでいます.

柳井・前田両氏とは,もしかしたら意見が違うかもしれませんが
ご指摘の箇所のシナリオは,私が書いた部分ですので以下に意図を書きます.
斜交解の使用は今後増加しそうで責任を感じておりますし,興味がありますので
どなたかより反論・ご指摘をいただけることを,切にお待ちします

まず斜交解の回転には,パタンの単純化と構造の単純化を目指した2種類の回転があり
ます.因子分析を行うことは,取り敢えず測定方程式によってデータが生成されるという
立場をとるということですから,「構造を単純化する回転」という発想自体が分析結果を
解釈する上で意味を持たないと,まず私は考えました.また米国の心理学関係の雑誌に
発表された斜交解を利用した最近の応用論文を集中的に調べた時期があったのですが
調べた範囲では1件も使用されていませんでした.
そこで,私は自分の考えに自信を深めて,さらに歴史的経緯を調べますと
計算機が発展していなかった時期に,まず構造を単純化して,その解を利用して
そう反系のパタンの単純構造を求めるという計算過程をへた時期があったようです.
以上の理由から,私は「構造を単純化する回転」はパタンを単純化するための
中間生成物以上の意味はないと判断しました.
次に「パタンの単純化を目指す回転をした場合の構造」ですが,こちらは出力結果に
おまけのようについてきます.ときどき眺めるのですがあまり有益な
解釈ができたことは有りません.ただし確認的(検証的)因子分析をした場合に
パスを引かなかった(そういう因果モデルの立場をとった)因子と観測変数
の間の擬似相関として解釈することはできますが,主要な解釈ツール
とはいえないようです.応用論文でもほとんど解釈しているものには
出会いません.

ここで責任をもって回答できることは,「米国で発表されるほとんどの応用論文では,
単純化されたパタンと因子間相関の2つを主に解釈に利用している」ということです.
その意味で前掲拙著のシナリオは妥当であったと信じています.少なくとも
多数派の分析の定石ですから,構造を無視しても避難されることはないでしょう.
しかし,それを支える上述のような考え方(根拠)は,私の知る限り因子分析の教科書
には書いて有りません.「その認識は違っている」「斜交解の構造にはこんな素晴らし
い使いみちがある」というご指摘があれば,大歓迎ですので,どなたか
フオローをお願いします.

話しは代わって「因子スコアか素点の加算か」ですが,一般的な文脈からは
これはどちらでも良いという結論でよいのではありませんか?

鈴木さんの因子スコアに対する主張は,とても実用的で
一般的な文脈からは大筋で賛成です
また個人的に私はプリズムの大フアンです
昨年は発表されるとすぐにコピーをとって勉強しました
プリズムとは,企業の状態を光にみたてて,潜在変数というプリズム
をとおして,ランキングという虹を描く
(MIMICモデルは,パス図にかくとプリズムが集光している形に似ています)
という意味ですか?
(もうすこし経済学的に安定した説明変数を使っていただけると手堅いのですが..
印象によるランキングはすこし強引な気もします)

しかし因子得点は,それそのものを解釈する場合は良いのですが
男女別に分散分析したり,回帰分析したり,,,,,,
と,新たな分析の入力に利用するのは控えたほうが良いのではないでしょうか
誤差が累積するからです.
(わたしはこれを密かに「あこぎ豆腐:煮て焼いて蒸して揚げる」と呼んでいます
もとの豆腐の味はしなくなるという意味です)
とくに探索的因子分析の場合は単純構造をあたえる因子負荷行列そのものが
無限の可能性のうちの1つであり回転法をかえると大小関係は変わらないけれども
数値は相当変わります.更に因子スコアの算出にははいろいろな方法があって
スコアの不定性は負荷のそれより大きいのです.
説明率の小さな因子のスコアには強い回帰効果が現れ,分散も信頼性も小さくなります

という立場の私から見ると,プリズムの潜在変数(スコア)の作り方という文脈からは
それは満足のいく方法とはいえません.
プリズムには,現在は3つの誤差が累積しています.
共分散行列から共分散構造を推定した誤差,
共分散構造から因子スコアを予測する際の誤差
因子スコアからランキングを推定する際の回帰係数推定の誤差
これらの誤差は並列しているのではなく,累積しています.

私は共分散構造の専門家なので,結論がどうしてもそこにいきがちなのですが
因子分析の結果を利用して,確認的なMIMICか確認的な冗長性分析のような
モデルを構成して,指標を作る際の重みとランキングのための
回帰係数を一度に求めては如何でしょう.そうすれば
共分散構造分析をする際の誤差だけで済みます.







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Hideki TOYODA Ph.D., Associate Professor,      Department of Sociology
TEL +81-3-3985-2321 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo (St.Paul's) University
toyoda (at) rikkyo.ac.jp  3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan                                  
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