[fpr 243] グールドの考え方について(2)

堀啓造

堀 啓造@香川大学経済学部です。

>佐藤達哉@福島大学行政社会学部さんは書きました:
>グールドは、因子の実在化に対して反対しています。その一方、多様なプロフィール
>で個人を記述することには一定の意義を認めています。

前者は、389ページ
>因子分析はすばらしい記述の道具であるが、定義できない(架空の)因子、
>すなわち心のベクトルを明らかにすることはできない。

という部分ですね。心理学が仮設構成から成り立つということについては思いを寄せ
ていないようですね。もちろん、因子分析は因子の存在を証明するのではなく、可能
性を示唆するだけですね。仮説演繹するための因子分析は一つのステップと考えるべ
きでしょうね。このあたり、あたかも探索的因子分析で証明できたと考える人に聞か
せたいところです。実験結果の後づけの考察が、証明されたと考える人も同じですね
。

私が因子分析のあとの尺度化を重視するのもそのあたりにあります。

しかし、因子分析というのはあくまでモデルがあって処理するものだという点につい
てはあまりわかっていないようです。

>★前者については知能の一般因子gとその生成手段であった主成分分析を対象に議論
を行い、

この点の主要な議論は
(a)一般因子の寄与率は50%〜60%と発達の一般因子に比べて低い
(b)直交回転すれば一般因子はなくなる。
(b-2)数学的に別の可能性がある。

の2つです。
(a)については、相関係数でいえば 0.7〜0.8もあり、これで低いと言われれば、心理
学は成立しないですね。物理測定と心理測定についてまったく配慮されていないです
ね。性格についても同じような議論があります。相関が0.7程度じゃ議論できない数値
でしょうか。もっとも、心理学では相関係数を使うことによってインフレした数字に
して、関係があるようにごまかしているところがあります。因子負荷量でも0.3のよう
に小さなものでも大事に考えている場合は笑っちゃいますが。

一般因子の寄与率が50%もあればめちゃめちゃ高い。そういうものを心理学のなか
ではなかなか見つけにくいのでは。

(b)については、直交回転モデルではということになりますね。前にも書きましたが、
直交回転で一見単純なモデルを示していたとしても、それが単純モデルの証明にはな
らないのです。

(a)と(b)の混合として斜交解のときに2次因子としてでてくる一般因子はせいぜい力
の弱い2次的なものだ(p394)。このあたりもモデル化の問題があるんじゃない。[fpr 
184]の議論と関係します。

一般因子の議論は因子分析よりも主成分分析の考えのほうが馴染むように思えます。

>後者に関しては因子
>分析を対象に議論を行っているため、多少わかりにくくなっていると思われますが、
>要するに「数学的抽象であるところの因子の実在化」=「知能の具象化」には反対し
>ていると思われます。

これは先にも認めていますが、心すべきところですね。

>★したがって、因子分析のそれぞれの因子に相当する知能が実
>在するというような話になれば反対するのではないでしょうか。

そうですね。もっと重要なのは差別するのに使われるのに反対ということでしょう。
または、決めつけの材料にされちゃうとか。

>★ちなみにgという
>考え方にはビネも反対していました。

精神年齢という考え方はgそのものですね。これは誰が考えたのですか。


今回読み直してみて、直交回転に肩入れしているわけではないことを確認しました。
文章としては、一番肯定的な書き方のように思えた、その印象が残ってしまったよう
です。実際、今回よんでもその印象を得た。

あの馬鹿げた本
The bell curve. は今年ソフトカバーがでました。著者のあとがきが追加されていま
す。統計の誤用の宝庫というコメントもあります。まあ、時間があったらよんでみま
すが、グールドの批評にあった、重回帰分析の決定係数が異常に小さいのに関係があ
るといっている件は、ぱらぱらめくるかぎりそうですね。

香川大学経済学部
        堀 啓造
hori (at) ec.kagawa-u.ac.jp

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