[fpr 427] 反応時間

岡本安晴

  長谷川さんから次のような問題提起を頂きました。
 
>従属変数としての時間(反応潜時、学習所要時間など)は物理的には比尺度ですが、じ
っ
>さいには“反応
>の遅さ”に関する心理量ということになるのではないでしょうか。
>だから、“非線形変換によって重要な性質が損なわれる(fpr421:南風原さん)”という

>とを承知して
>いても、対数変換をした上で分散分析にかけたりしますよね(誤反応数を開平変換する
の
>も同様)。
>それと、反応時間や学習所要時間の代表値としては平均よりも中央値で比較することが
あ
>ると思います。
>これなども、かけ離れた測定値があるような測定値については、順序尺度的に扱ったほ
う
>がよいという意
>味で、上記の(1)と(3)の例になると思います。
 
  反応時間について私は次のように考えています。
 
  反応時間は観察された行動を記述するものとして、物理量として扱っています。
  反応時間から推測される、あるいは構成される心理学的な指標、あるいは概念/
行動のモデルは、設定される場合には物理量として観測される反応時間と関係する
ものとして別に考えられるべきものです。
  対数変換などは、単にデータの分布が分散分析のモデルの仮定からあまり外れない
ようにするという統計学的なモデルの要請から行われているように思います。
その意味で、逆数をとって速度として意味付けする変換は、統計的モデルからの
要請に加えて、「変換値の速度という意味付けができる(Meyer ?)」ということに
なります。
 
  私自身は、反応時間の分析は、物理量の分布の分析として扱い、観察可能な行動を
記述する物理量としての反応時間の分布の、心理学的なモデルから予測される差異を
見ています。例えば、Two-state Modelの検討では、fixed-point propertyの確認を
行っています(Jap. Psy. Res., 1982年頃のもの2編)。ちなみに、fixed-point
propertyは単調変換に対して不変でもありますが。
 
                              岡本安晴@金沢大学文学部

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