[fpr 485] 統計的方法DOs and DONTs(3)

南風原朝和

南風原@東大教育心理です。

豊田さん@立教社会が [fpr 482] で,私の [fpr 452] の発言について以下
のように書いています。
 
 >> Tomokazu Haebara <haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp> さんは書きました:
 >> 
 >> >たとえば,1要因の効果の分析ですと,
 >> >  y=μ+αj+εij
 >> >というモデルになりますが,ここで条件と被験者との交互作用があると考
 >> >えるならば,αjは被験者母集団における平均的な効果の大きさとなり,で
 >> >は「母集団」は何なのか,どんな集団における平均的効果なのか,という
 >> >問題が出てきます。
 >> >
 >> >これに対し,条件jの効果が,どの被験者においてもαjだけあると考える
 >> >と,この問題は回避されます。μという母集団平均を表す項はありますが,
 >> >そのμからの被験者iの(全条件を平均した)偏差をβiとし,εijを
 >> >βi+γijのように分解すれば,
 >> >  y=μ+αj+εij
 >> >   =μ+αj+βi+γij
 >> >となり,μ+βiが被験者iの全条件にわたる期待値となります。これを
 >> >μiとしてモデルを整理すれば
 >> >  y=μi+αj+γij
 >> >となって,被験者母集団における平均というもの,そして母集団なる集団
 >> >を考えることなくモデルの各項を解釈・説明することができます。(だか
 >> >ら効果は一定と考えましょう,ということではありません。念のため。)
 >> 
 >> これは「単純無作為実験」と「ブロック実験」の相違を解説していると
 >> 解釈して良いのでしょうか?
 
「単純無作為実験」と「ブロック実験」の相違ではなく,条件の効果の一般性
(または一様性)について,条件と被験者の交互作用がある場合(nonadditive
な場合)と交互作用がない場合(additiveな場合)の相違について書いたつも
りです。この区別は「ブロック実験」(被験者内要因に関する実験)において
議論されるのが普通ですが,上記の発言では主として「単純無作為実験」の場
合について,効果の一般性と母集団の問題について考えたことを述べました。
概念的な議論であり,後半のモデルのパラメタのすべてが「単純無作為実験」
から推定可能というわけではありません。

読み返してみると後半部分にある「(全条件を平均した)偏差」とか「全条件
にわたる期待値」という表現が「ブロック実験」を前提としたような表現にな
っていて,その部分は適当でなかったと思います。そこでは観測値ではなくパ
ラメタのことだということを言いたかったのです。

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