[fpr 623] Effect Size

南風原朝和

南風原@東大教育心理です。

効果の大きさの推定についての続きです。

堀さんが以下のように書いています。[fpr 621]
 >> Howell(1992)では実験効果の大きさmagnitude of the experimental 
 >> effectについて、η2(eta squared)、ω2(omega squared)をあげていま
 >> す。η2は記述、ω2は推測するものとして使う。partialed η2 とf、
 >> ω2とfの変換式をCohen は導いています。fとω2の利用は基本的に同じ
 >> と考えていいものですね。

効果の大きさの指標は,
 ・ω2,η2(=R2) などの分散説明率
 ・rやfや標準化された平均値差dなど,標準化された効果量
 ・平均値差や回帰係数など,標準化されていない効果量
というように分類されることがあるようで,Kirk は最初のカテゴリを
Strength of Association,2つ目(の一部)を Effect Size と呼んで
いますが,人によって用語は様々なようです。

あと Kirk らは,主に標本のデータから効果の大きさを推定するという
観点からこうした指標を扱っているのに対し,Cohen は検出すべき母集
団差を表現することに主眼があり,このことが記号や用語の違いに反映
しているようです。

ところで,t検定に対応した最も基本的な効果量である
 (1)  d=(m1ーm2)/σ
ですが,tは2乗すればFだということで,これまでの議論から,非心F
分布の非心度λを
 (2)  λ^=[F*(df2−2)/df2−1]*df1
で推定し,これを用いて
  (3)    d^=f^*2=sqrt(λ^/N)*2
で推定することが考えられます。しかし,この方式では,前に指摘があっ
たように,λ^が負になって計算ができないことがよくあります(下表の
・の箇所)。

芝・南風原「行動科学における統計解析法」では,dをごく単純に
 (4)  d'=(標本平均の差)/(プールされた群内標準偏差)
      =t*sqrt [(n1+n2)/(n1*n2)]
で推定しています。それは,メタ分析等でこの式が多用されていることと,
Hedges & Olkin (1985) "Statistical Methods for Meta-Analysis" に与え
られているdの近似的な不偏推定量
 (5)  d”=d'×(4N−12)/(4N−9)
とd'が,ある程度大きなN(=n1+n2)に対して十分近い値となること
に基づいています。

d'=.2,.5,.8 に対して,d^とd”を計算したのが下の表です。d^と
他の2つの推定値との差が目立っています。(2)による非心度の推定があま
り適切でない状況というのを明らかにする必要がありそうです。

-----------------------------------------------------------------------
              d'=.2                d'=.5        d'=.8
 自由度    d^        d”       d^        d”       d^        d”
-----------------------------------------------------------------------
    10     .        0.18462      .        0.46154     0.42269   0.73846
    20     .        0.19241     0.20780   0.48101     0.62784   0.76962
    30     .        0.19496     0.32914   0.48739     0.68727   0.77983
    40     .        0.19623     0.37718   0.49057     0.71607   0.78491
    50     .        0.19698     0.40383   0.49246     0.73313   0.78794
    60     .        0.19749     0.42089   0.49372     0.74441   0.78996
    70     .        0.19785     0.43278   0.49462     0.75244   0.79140
    80     .        0.19812     0.44155   0.49530     0.75843   0.79248
    90     .        0.19833     0.44829   0.49582     0.76309   0.79331
   100     .        0.19850     0.45363   0.49624     0.76680   0.79398
   110    0.05965   0.19863     0.45797   0.49658     0.76984   0.79453
   120    0.08091   0.19875     0.46157   0.49687     0.77236   0.79499
-----------------------------------------------------------------------

なお,dの近似的な不偏推定値d”を用いてp値に対応する Observed 
Power を計算すると,以下のようになります(α=.05 の両側t検定)。
 
    ---------------------------------------------
       自由度    p=.10       p=.05       p=.01 
    ---------------------------------------------
          10    0.32800     0.45978     0.75077
          20    0.35209     0.48018     0.74023
          30    0.36021     0.48687     0.73699
          40    0.36428     0.49019     0.73543
          50    0.36672     0.49217     0.73451
          60    0.36835     0.49349     0.73391
          70    0.36951     0.49443     0.73349
          80    0.37039     0.49514     0.73317
          90    0.37106     0.49568     0.73292
         100    0.37161     0.49612     0.73273
    ---------------------------------------------

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