[fpr 722] 福井1位、埼玉最下位の意味

SUZUKI, Tokuhisa

鈴木@日経です

また、新聞の話ですね。企画庁の「豊かさ指標」のランキングは企
画庁で作ったものです。新聞社がそれを無視せず、掲載するのは、
あんなものでも、それによって現実の経済政策に影響を持つ可能性
が高いからです。しかしみんながランキングを見て「へぇ」と思う
ことは確かなので、反論も同時に掲載するのがメディアの方法でし
ょう。たとえば、埼玉知事の見解を掲載したり、読者の声を掲載す
ることです。

思えば20年前、欧米人に「うさぎ小屋」とバカにされた時から、政
府は「豊かさを真に実感できる社会作り」という政策課題を掲げて、
統計資料も作り始めました。当時、学生だった私は「ちえっ。お前
ら白人には、隣の晩飯の献立まで分かってしまうような下町生活へ
の愛と嫌悪にうずまいた芥川竜之介の精神なんか理解できないんだ。 
いつもそこに立ち返って闘い続けた、あしたのジョーにはなれない
んだ。かわいそうだなぁ」と悪態をついてみました。

松原(1996)『わかりやすい統計学』(丸善)が、「統計の倫理」の
節で「豊かさ指標」を引用していたので、私も企画庁のホームペー
ジから昨年の情報をDLしていました(まだ分析していません)。 
一般に、県の社会・経済指標を主成分分析するとすぐに分かります
が、第1主成分に規模の成分が出て、第2主成分が型の成分になるの
で、企画庁が140以上もの観測変数の尺度をどう処理したか興味を
持ちました。8個の潜在変数の作り方にも興味をもったのです。松
原(1996)は「豊かさ指標」を「未熟である」と指摘しました。しか
しこれを作った企画庁の未熟な担当官を、東大で教育して卒業させ
たのもまた松原先生じゃあないのか?。

いずれにせよ、新聞社があのランキングを作っていません。新聞社
だったら、もっと別のことをやると思います。私だったら、調査が
専門なので、各県を市区部と群部に層化して500位ずつ標本抽出し
て、47000人規模の全国調査をします。質問内容は企画庁に対応さ
せた140項目に対する「満足度」です。狙いは。読者の声「住めば
都だ、ほっといてくれ」という実感と経済指標との差に注目するこ
とです。

140の観測変数を因子分析して、8因子の確認を試みます。このデー
タ行列はランク落ちするので、最尤推定も最小2乗推定もあきらめ
て、主成分分析ですね。果たして結果はどうなるか?。さらに、住
民の満足意識変数Yと、企画庁の状態変数Xで、正準相関分析する
のも面白そう。そういえば、正準相関分析というのは、理論的には
興味深いけれど応用できた試しが無い(3類としてでなく)。いっ
たいこの役立たずの手法は誰がどこで応用しているのだろうか?。 
ついに応用可能性が開けるかもしれない。この結果、企画庁の論理
が、住民の心理と著しく違っていれば、経済政策の見直しを提言で
きるかも知れない。行政改革で最初に消えそうな企画庁だけれど、
住民重視の政策運営を促すために、企画特集「行政と国民の論理と
心理」と銘打って調査分析結果を使ってもいい。

数年前、社員研修で経済データを扱っている社員の指導をしたとき、
企画庁の景気予測指標が不自然なので、主成分でトレンドを描かせ
たことがあります。こうすると、でこぼこが消えなめらかな時系列
グラフになり実感にもあいました。第1主成分と第2主成分で、確か
どちらかが先行指標を表現していて、今思うと我ながら、なかなか
いいアイデアだったと思います。観測変数よりも、合成変量(潜在
変数)にした方が実感・真実に近いことを表現できるのです。

実は今書いている原稿の中で「なぜランキングか」という事を考え
ていたところでした。その回答(ポジティブ)はいちおう固まって
いるのですが、新聞のランキング好きは反省の余地もあります。私
自身、大学での授業で事例紹介する時は方法論に限定して逃げてい
るフシもあり。

--------------------------------------------------------------
鈴木 督久 ( SUZUKI,Tokuhisa )      e-mail: stok (at) nikkei-r.co.jp
日経リサーチ   〒101 千代田区神田司町2-2-7  パークサイド1ビル
TEL:03-5296-5101, FAX:03-5296-5100, Home(TEL&FAX):03-5261-7077
--------------------------------------------------------------

スレッド表示 著者別表示 日付順表示 トップページ

ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。