[fpr 746] 未成年者の凶悪犯罪

守一雄

FPRの皆様:守@信州大学です。

 神戸の事件以来、いろいろなところで、「未成年者の凶悪犯罪が増えている」とい
う表現を耳にします。こんな事件が起こるとなんとなくそんな気がしてしまいますが
、どうもみんな騙されているようです。

 青少年白書によれば、青少年の犯罪は1983年をピークに減少傾向が著しく、総数で
196千人(1983)から131千人(1994)に、凶悪犯では1707人(1983)から1382人(19
94)となっています。私が中学生のころの1965年のデータでは、凶悪犯が7243人です
から、「凶悪犯罪は昔に比べて減っている」が正しいはずです。

 ところが、読売新聞7/6(日)に掲載の世論調査では、質問項目にまではっきりと
「未成年者の凶悪犯罪が増えているため、警察庁が(中略)厳しく対応する方針を決
めました。あなたはこの方針に賛成ですか?」となっています。どうやらその根拠は
、警察庁が以下の3点から青少年の補導・保護から逮捕へと方針を変えたことのよう
です。しかし、これらだけから「凶悪犯罪が増えている」というのは言い過ぎで世論
誘導ではないでしょうか?
(1)昨年「おやじ狩り」などの強盗事件で逮捕・補導された少年が1068人にのぼり
、24年ぶりに千人を突破した。
(2)このうち高校生が346人で、5年前の倍である。
(3)少年の刑法犯は1983年以降減少してきたが、昨年から増加に転じた。

 ちなみに、この読売新聞の世論調査では、こうして回答者を脅しておいて、国民の
治安悪化への印象が強まっていると結論づけています。


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