[fpr 904] 科目間平均点差問題

岡本安晴

 
 
  岡本@金沢大学です。
 
 
鎌田さん@ミシガン州立大学大学院[fpr 903]より:
 
>>  地理の50点と国語の50点は、それぞれの科目の分布における位置が同じ
>>という以上にどのような意味で同じなのでしょうか。
>
>「分布」における位置が同じということではないと思います。それぞれの教科で使っ
>た「スケール」における値が「たまたま」同じということだと思います。両教科とも
>得点の範囲とインターバルは同じですが、それらは同じスケールではないはずです。
>
>>  45点と55点の差と、70点と80点の差が同じものを表わすというとき、分布上の
>>位置の変化以上のどのような意味において同じである、あるいは比較可能なの
>>でしょうか。
>
>まず、素点の45点と55点の差が70点と80点の差と同じだという仮定が、一般のテスト
 
  私のメール[fpr 902]では、これらの点数は偏差値としての点数です。文脈から
偏差値として理解されるはずだと判断して書きました。
 
 
>はなりますが、それぞれの測定値間の順序と差の比は元の測定値のままです。つまり
>元のスケールタイプと全く変わりません。
 
  素点がordinal scaleならば偏差値もordinal scaleということですね。
  偏差値を組み合わせて合否判定に用いる総合得点を算出するとき、偏差値が
ordinal scaleの水準ならば理論的にjustifyするのは大変ですね。
  Ordinal scaleの取り扱いの難しさはよく知られています(e.g. Townsend and
Ashby (1984), Psychological Bulletin, Vol.96, 394 - 401)。
 
 
>(それともいわゆる巷で言われる「偏差値」とは、正規化されたものですか?もしそ
>うだとしたら私の勉強不足ですのでご容赦ください。)
 
  偏差値は、芝・南風原「行動科学における統計解析法」(1990,東京大学出版会)
では、2つのものがあると説明されています。
 
  1つは、次のZ得点
 
       Z得点 = 50 + 10*(素点ー平均)/標準偏差
 
で、これをを偏差値と呼ぶこともあると説明されています。
 
  もう1つの方の偏差値が本来の意味での偏差値で、次式
 
       偏差値T = 50 + 10*標準正規分布のパーセンタイル
 
で算出されると説明されています。
 
  偏差値に関する理論的な問題点についてのfprでの議論なので、本来の意味での
偏差値として説明されている2番目の意味での偏差値について先のメール[fpr 902]
では問題にしました。
 
  日本は、今、受験の真っ只中です。そのような時期に、誰でもがROMになれる
fprでミシガン州立大学大学院の専門家から問題提起されたわけです。
  1人の実験心理学を専攻しているものとしては、きちんとディベートせざるを
得ない段階まで議論が進んでしまった、偏差値には何の理論的問題もないかの
ような議論になっていると感じました。
 
  子をもつ親としては、入試センターの対応の仕方が現実的にはベストであると
思っています。
  もちろん、今後、専門の方々も含めてより良き方向が求められることも望んで
おります。
 
 
                                         岡本安晴
                                         C00279 (at) simail.ne.jp
 
 

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