[fpr 1018] ドライバーの反応時間の分析・検定手法について教えてください-お礼

丹治和博

丹治和博@気象協会です。

先だっては、私の疑問
>この調査に先立ち、基礎的なドライバーの運転特性を把握するこ
>とを目的として、冬期道路上のドライバーの反応時間(外部信号
>からブレーキペダルに足を乗せるまでの時間)を様々な被験者・
>状況下で観測したところであります。
>
>このデータにもとづき、「条件A」「条件B」の被験者の相違を
>統計学的手法によって、有意差の検定を行おうとしていますが、
>分布形はどうやら正規分布と言えそうになく、その検定手法に頭
>を悩ませている次第であり、いくつか質問させていただきます。
>どなたかご教示していただければ幸いです。
>
>   (1)(ドライバーの)反応時間を分散分析する場合、何か
>         しらの分布形が仮定されているのでしょうか?
>   (2)また、この時の検定方法としてどのような手法が用い
>         られているのでしょうか?
>   (3)上記の前例として、過去の文献・論文などはあるので
>         しょうか?

につきまして、
  森   敏昭   様
  松井 孝雄   様
  岡本 安晴   様
  南風原 朝和 様
  長谷川芳典  様
  中山 実     様
  豊田 秀樹   様
から、ご意見・ご教示頂きまして、大変ありがとうございました。
特に森敏昭様には、お忙しい中、参考図書をFAXいただきまして、大変助かりました
(参考図書の方は昨日購入し、分野が違いながらも詳細でありわかりやすく、非常に役
立っております)。

さて、この問題に対しまして、森敏昭様の
>お尋ねの件、私の専門である認知心理学の領域でも反応時間の分析をすることが多いので
>すが、その際には測定値に対数変換を施し、その変換値に対して分散分析やt検定を行う
>のが一般的な方法のようです。また、各被験者を同一条件で複数回測定した場合、中央値
>をその被験者の測定値とし(被験者内の反応時間の分布も正規分布に従わないことが多い
>ため)、さらに、各条件の代表値としては通常の算術平均ではなく幾何平均を示すようで
>す。
を基本とし、対数変換したうえでの差の検定を行ったところであります。

その結果、各条件に対して概ね
    ◆分散に有意差はみられない  (例えば、高齢者の個人差は対数分布の範疇といえそう)
    ◆平均値には有意差がみられる(例えば、高齢者の反応速度が遅い)
変換前の値の統計に比較して標準偏差などは現実的な値でもあり、結果としてはまあまあかと
考えております、

ただ、南風原朝和様のご意見
>私は,尺度変換はp値を得るための便法にすぎないと考えています。仮に
>ある変換で母集団分布を正規化できるとしたら,その変換を施したデータ
>から得られるt統計量のp値は,t分布を用いて正確に計算できます。し
>かし,このp値は「正規化した場合の」という条件付きの値であり,もと
>の尺度に対応する母集団分布のもとでのt統計量の分布から得られるp値
>とは一致しません。したがって,変換後の尺度では帰無仮説を棄却できる
>けど,変換前の尺度ではできない,という可能性があります。

や、中山実様のご意見
> 私もこの意見に賛成です。実験が反応時間による比較を目的とし
>ていれば、変換値で議論すれば意味が変わってしまうように思いま
>す。ただ、実験の目的が、何らかの反応の速さ(速度)を比較するこ
>とを目的とする場合は、実際に測定するのは反応時間であっても結
>果の検討は逆数値で議論しても構わないのではないかと考えていま
>す。

豊田秀樹様のご意見
>「対数変換したデータの算術平均」間に有意差が見出されても,
>それを指数変換(逆変換)した値は,もとのデータの算術平均
>には一致しませんから,すくなくとも「反応時間」の算術平均
>に差があったとは解釈できないのではないでしょうか?
>飽くまでも対数変換した尺度に具体的な意味付けをして,差を
>解釈しなくてはいけないと思います.そうすると対数変換した
>尺度の(安全の向上に役立つような)具体的意味とは何だろう
>という,次の疑問が湧いてきます.

のように変換後(対数変換)の値の有意差が、もとの標本に当てはまるのか?
という疑問は残ります。ただ、得られた結果は直感的に受け入れやすい結果であり、
大きな誤りはないようにも思えます。

また、岡本安晴様からご教示いただきました
>  単に2条件での差の検定なら、ノンパラメトリック検定を行うという
>のではどうですか。
ですが、「集団についての前もっての知識がない−平均値も分散も等しくなささ
そう−ということ」、ラページ検定というのを行ってみたところです。ただ、その
結果が今一つ釈然としない感があり、分布を仮定しての検定を行ってみました。

このほか、心理学における統計手法の考え方(?)について多くのご意見・ご教示
をいただきましたが、この方面に素人である私には難解な部分も多く、少しずつ
勉強させて頂きます。本件の解析はまだまだ進行中であり、また質問させていただく
かもしれません。

近年のネットワークの偉大さに驚嘆するとともに、このような素人の疑問に際しまして
全国の専門家の方々から貴重なご意見をご多忙中にもかかわらず、いただきまして大変
ありがとうございました。重ねてお礼申し上げます。




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                                     丹治 和博 tanji (at) sapporo.jwa.go.jp
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                                                     調査部 道路調査課
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