[fpr 1121] 相関係数について質問紙変更

宮崎康夫

ミシガン州立大学の宮崎康夫です。

相関係数の値が2変数間の線形関連性を表す指標として大きいのか小さいのかは分野
により異なることはすでに述べられましたが、一つの客観性のある目安として、相関
が中程度であるというとき、どの程度の検定力が想定されているのか調べてみるのも
一興かと思いメールしてみます。

Cohen(Jacob) は その著書「Statistical Power Analysis for the Behavioral
Sciences] 2nd Ed. (1988), Lawrence Erlbaum Associate Inc.
の中で行動科学の範囲内では Effect Size Index
として使う単相関は、一応の定義として、

小(small) rho(母相関係数)=.10
中(medium) rho =.30
大(large) rho =.50

として(page
83)、その後に2変量正規分布の仮定の上で、rの漸近正規性を利用したtーテスト
(H0:rho=0、T=r*[(n-2)^1/2]/[1-r^2]^1/2,
rは標本相関係数、nは標本数)の検定力の表をあげています。それによると、片側
検定、アルファ水準=.05の場合ですと、

                 rho
n     rc    ,10   ,30  ,50

 10   .549   .08   .22  .46
 30   .306   .13   .50  .90
 50   .235   .17   .69  .98
100   .165   .26   .92  >.995

となっており(rcはその標本数、片側検定での場合のアルファ水準=.05とした場合
の標本相関の臨界値)、かりに rho=.30
を中程度の相関と考える研究者の場合、その標本数が30の場合は検定力が.50(対立
仮説rho=.30が正しい場合に、標本数30のサンプルから得た標本相関がr=.306の場
合、帰無仮説を否定する確率は.5(2回に1回しか否定できない)で、主張はやや心
細い状況です。

すでに症例数はいれないことをのべられましたが、上記のような理由から、通常どの
程度標本を集めているのかもアンケートに加えると、検定力もわかり面白いのではな
いかとおもうのですが。

                                                                       
 宮崎康夫

At 11:36 98/08/19 +0900, you wrote:
> To fpr (at) nuis.ac.jp
> 
> 湯浅秀道です
> 
>   少し考え直してみたのですが、岡本先生のアイデア以上はおもいつきません
> でした。そ
> こで、以下のように質問紙を訂正しました。
> 
> *********************************************************
> 調査(無記名)のお願い
> 
>   相関係数の値が、各研究分野によって異なる事は暗黙の了解とされているよ
> うである。
> しかしながら、それが明らかとされなければ、各研究分野の垣根は高くなり、
> より総合
> 的な研究の芽が詰まれてしまう可能性があります。そこで、相関係数の値が、
> 各研究分野
> によって異なるかを各分野の研究者の主観的判断より調査する事を計画しまし
> た。
>   回答は「MXE05064 (at) nifty.ne.jp」へメールしてください。なお、本調査の結果
> は個人名
> がわからないようにし、各メーリングリストで公開するとともに、公開した結
> 果は自由に
> 使用できるものといたします。
> 
>                                                   湯浅秀道
> 
> 
> 年齢      、 性別      、 研究分野
>    ------       -------         ---------------------
> 
> 質問:相関係数に関してお答え下さい。
> 
>   「中程度の相関がある」とはどの程度の値と思いますか?
> 
>     r=    
>       ----
> 
> ご協力ありがとうございました。
> 
> ***************************************************************
> 
>   まだまだ、問題点が多いかもしれません。特に症例数が記載されていない事
> と考えて
> います。各分野で一般的に使われている症例数は非常に異なります。研究計画
> の時点で
> αβより決まる事もあるのですが、一般的には暗黙の了解による症例数の決め
> 方が多い
> ようなので一律に記載できないのです。ご意見をお聞かせ下されば幸いです。
> 
>   それと、実際にはそのメーリングリストの管理者に質問調査の了解が必要で
> あり、そ
> の了解を得た事を明記する事が大切だと思っています。その際に、一般的にメ
> ンバーは
> 公開されていることが多いので、問題は少ないと思いますが、会員数などの情
> 報を利用
> して良いかも確認する必要があると思っているのですが。もっとも、メーリン
> グリスト
> 参加者だけのデータですから非常に偏った集団ですが、、。
> 
> 
>   調査の前に、各分野での教科書を調べる事が必要だと思いまして、相関係数
> の解釈に
> ついての記載を探してみました。まだまだ、ありそうなのですが、以外と医学
> 系の教科
> 書(ZARなど)では見当たらなかったです。とりあえず参考に少しあげてみま
> す。他に違
> う分け方がしてある文献等をご存知の方が見えましたら教えてください。
> 
> 
> 豊田秀樹:調査法講義P71&田中敏:実践心理データ入門;1. 0.2以下であればほ
> とんど相関
> がない、2. 0.2-0.4であれば弱い相関がある、3. 0.4-0.7であれば中程度の相関
> がある、4. 0.7以上であれば強い相関がある。
> 
> Freedman:Statistics;r=0.4ならa liner pattern is just beginning to 
> emerge. r=0..
> 6ならwith a stronger linear pattern. r=1ならthe stronger is the linear 
> association between the variables and the more tightly clustered are 
> the points around a line.
> 
> 東京大学教養部統計学教室:統計学入門;データの大きさがn=15ぐらいであれ
> ば、相関係数
> はr=0.7程度でも実際には弱い相関であり、r=0.5ならば事実上関係があるよう
> には見受け
> られないことに注意してほしい。
> 
> 
Yasuo Miyazaki
Measurements and Quantitative Methods
College of Education
Michigan State University
Phone: (517)353-5401 (Office)
         (517)355-2892 (Home)
E-mail:miyazak1 (at) pilot.msu.edu
                  


スレッド表示 著者別表示 日付順表示 トップページ

ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。