[fpr 1120] 教えて下さい

豊田秀樹

豊田@立教大学です

Eiichi KAMIMURA <kamimura (at) ge.niigata-u.ac.jp> さんは書きました:
>神村@新潟大学です.
>> 豊田@立教大学です
>> 性格の研究をなさっている方にお聞きし
>> たいのですが性格の研究,測定は,どのような場面で役にたつの
>> でしょうか?
>いちおう,所属先では,人格心理が担当となっております.
>何か,発言せねば,と思う一方,気は重いのですが,
>以下のように考えをまとめました.
>他の方のご意見をうかがいたいとも思います.「以下略」

実は,ことしの日本心理学会(東京学芸大学)で,性格関連のシンポ
に参加することになり,そのための原稿を書いていたのですが,あい
てが大御所のなのでブルーになり,どなたかとお話したくなりました.
とても参考になりました.ありがとう御座います.

miyaoka (at) med.showa-u.ac.jp (H. MIYAOKA, MD, PhD) さんは書きました:
>宮岡@精神科医です。
>ある雑誌に掲載された論文の中に、「ある特殊な職業に従事する者300人(男20
>5名、女95名)の現状を調査するために、アンケート調査を行ない、回収できたの
>は160名であった。その中で、仕事中に事故の危険を感じたことのある者は男性で
>は108名中62名、女性では52名中31名であった。」という記載があり、危険
>を感じた者の割合に男女差がないことをいうためにカイ2乗検定がなされています。
>しかし最初の300人は極めて特殊な職種であり、研究目的からみても全数調査と理
>解されます。
>1)このような場合、検定に何らかの意味を持たせることが可能ですか。

正攻法の回答としては,「上記のようなことはしてはいけない」です.
また差が0でないことを棄却しても情報量は少ないので,具体的実数
の差を実質科学的に考察するのが望ましいでしょう.

半分本気,半分は夏の真昼の冗談としては「スーパー母集団への一般
化として解釈する」というのがあるらしいです.スーパー母集団とい
うのは,パラレルワールドのようなもので,古くは小松左京,最近で
は岩井俊二の「打ち上げ花火,下から見るか横から見るか」が有名で
す.つまりちょっとた選択の違いが,似たような多数の母集団を作り
出すという思考実験で,現在扱っている全数調査データはスーパー母
集団からの「標本」と考えます.上記ビデオでは「典道と祐介の2人が
好きな女の子とかけおちするためにプールで勝負し、それがパラレル
ワールドの分岐点になります.どちらの道でも、一つの悲しい結末に
辿りつく」という話です.これなどは母集団「間」の分散がほぼ0か
それに近い場合の例で,この場合は比較的簡単に公式が作れそうです.
最近はやりの「蝶はばたきが恐慌の原因になる」というようなカオス
ティックな状況ではスーパー母集団への一般化は無理でしょう.どな
たか「スーパー母集団への一般化」に関する文献をご存知方は教えて
下さい(スーパー母集団の考えかたは,クラスターサンプリングに通
じるものが有ると思います).

>2)全数調査の場合、結果として調査結果を示す以外に、検定が必要になることがあ
>りますか。

もちろんあります.たとえば,全数調査といっても必ず欠測があり,そ
れがランダムに生じているばあいは(回答拒否と回答内容が独立なら)
真の値は未知ですから必要になります.昨年の小生の講義の期末試験では
「学生数1200人の学部で,全数調査をし800人が回答し,「期末試験
でカンニングをしたことがあるかどうか」調べたところ15%の学生が
「カンニングをしたことがある」と答えた.匿名性が保証され,学生は
正直に回答しているものと考えられるとき,「カンニングをしたことが
ある」学生の95%の信頼区間は何人から何人の間か.区間の下は切り捨
て,区間の上は切り上げし,小数点以下は区間が広がるように整数化す
ること.ただし欠測はランダムに生じているものとする.」
というような問題を出しました(公式は拙著「調査法講義,朝倉書店」
参照して下さい).

これから出張なので,しばしおいとまいたします.

--
----------------------------------------------------------------------
TOYODA Hideki Ph.D., Associate Professor,     Department of Sociology
TEL +81-3-39852323 FAX +81-3-3985-2833,   Rikkyo(St.Paul's)University
toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan
----------------------------------------------------------------------

スレッド表示 著者別表示 日付順表示 トップページ

ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。