[fpr 1140] 教えて下さい

岡本安晴

岡本@金沢大学です。

  南風原さんの

>ところで,差の検定のような基本的な検定の場合は,
>母集団と標本の関係に頭を
>悩ますのに,多変量解析のような複雑な分析になると
>「母集団分布に多変量正規
>分布を仮定」といったことが問題になりにくいのは
>何故でしょうね。
([fpr 1125]より)

の御指摘がありましたので、因子分析で尺度水準の影響を調べてみました。
単調変換するとそれに対応して因子数が増えるという結果が得られました。

  まず、10個の変数Xiの値を

      Xi = F1 + 0.1*Ei

によって与えました。F1、Eiは互いに独立に標準正規分布に従う確率
変数です。データ数は1000です。
  このときの、初期値に対する固有値は

                 1     9.89697
                 2     0.00051
                 3    -0.00024
                 4    -0.00074
                 5    -0.00092
                 6    -0.00106
                 7    -0.00123
                 8    -0.00162
                 9    -0.00191
                10    -0.00233

で、1因子の主因子解に対する共通性は

  0.98991
  0.99003
  0.98974
  0.99018
  0.98953
  0.98965
  0.98936
  0.98957
  0.99043
  0.98962

因子負荷量は

   0.99494
   0.99500
   0.99486
   0.99508
   0.99475
   0.99481
   0.99467
   0.99477
   0.99520
   0.99480

となりました。

  次に、次の変数変換を行いました。

        X1  = X1
        X2  = X2
        X3  = X3
        X4  = X4
        X5  =  exp( 3*X5)
        X6  =  exp( 3*X6)
        X7  =  exp( 3*X7)
        X8  = -exp(-3*X8)
        X9  = -exp(-3*X9)
        X10 = -exp(-3*X10)

  このときの、初期値に対する固有値は

                 1     5.16956
                 2     2.78861
                 3     1.66323
                 4    -0.00282
                 5    -0.00323
                 6    -0.00339
                 7    -0.00740
                 8    -0.01473
                 9    -0.02238
                10    -0.03321

1因子の主因子解に対する共通性は

  0.88427
  0.88594
  0.88055
  0.88356
  0.17632
  0.16338
  0.16534
  0.30526
  0.25422
  0.28684

因子負荷量は

   0.94036
   0.94125
   0.93837
   0.93998
   0.41991
   0.40420
   0.40662
   0.55251
   0.50420
   0.53557

となりました。

  1因子解は不適当で3因子必要であると考え、3因子の場合の
主因子解を求めました。
  共通性は

  0.98965
  0.99031
  0.98952
  0.99032
  0.93756
  0.99038
  0.97401
  0.89752
  0.96167
  0.94332

で、プロマックス回転 (r=4)後の因子負荷量は

  -0.99335   0.00150   0.00256
  -0.99307   0.00344   0.00264
  -0.99533   0.00055  -0.00191
  -0.99436  -0.00158   0.00321
  -0.02621   0.96031  -0.00799
   0.01526   0.99956   0.00539
   0.00658   0.98883   0.00236
  -0.05360  -0.01237   0.92551
   0.05002   0.01272   0.99897
  -0.00845  -0.00141   0.96794

となりました。

  因子相関行列は

   1.00000  -0.29961  -0.39089
  -0.29961   1.00000   0.01998
  -0.39089   0.01998   1.00000

となっています。

  同じ因子による変数であっても単調変換すると異なった因子による
変数として分析されています。
  つまり、1因子性の変数(項目)群であっても、高い値が強調される、
低い値が強調される、天井効果がある、床効果がある、というとき、
このような変数群にはそれに対応した因子が現れるという現象です。

  このことは、豊田さん風の言い方を借りれば

    「因子と変数の関係が線形であって、かつ、変数が間隔尺度の
  の水準以上である」という条件が満たされていないときは、
  因子分析あるいはその上位モデルとしての共分散構造分析を
  行ってはならない。

ということになるのでしょうか?

  上のシミュレーションのプログラムは次のWebページ

   http://www.users.kudpc.kyoto-u.ac.jp/~e50048/page3/

にアップロードしました。


                                    岡本安晴
                                    c00279 (at) simail.ne.jp


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