[fpr 1143] 相関係数

豊田秀樹

豊田@立教大学です

昨日までやまごもり,明日から,またやまごもりです.

湯浅 秀道<MXE05064 (at) nifty.ne.jp> さんは書きました:
>湯浅秀道です
>竹内一夫様ありがとうございます。
>調査にMLを使う事は、確かに問題点もあるようですね。
>少し、そのへんも考え直してみます。

湯浅さんのメールはいろいろと議論を起こして有意義ですが,
湯浅さん自身の提案は,ネガティブな感じになってしまい,
提案のきかっけの一つが小生の教科書の記述であることを知
り,申しわけない気持ちになりました.すこし言い訳を書き
ます.

湯浅 秀道<MXE05064 (at) nifty.ne.jp> さんは書きました:
>湯浅秀道です
>  相関係数の算出方法はいろいろな方法があり、その値の解釈は症例数によっ
>て異なる事に注意しなければならないことは言うまでもないが、おおよその目
>安が教科書に示されている。例えば、豊田や田中らは、「1. 0.2以下であれば
>ほとんど相関がない、2. 0.2-0.4であれば弱い相関がある、3. 0.4-0.7であれ
>ば中程度の相関がある、4. 0.7以上であれば強い相関がある。」としている。
>しかしながら、相関係数の値が、各研究分野によって異なる事は暗黙の了解と
>されているのも事実である。

相関係数の関連の程度が分析目的によって異なることは「暗黙」の了解で
はなくて一般的に広く明示的に述べられていることです.たとえば豊田他,
原因を探る統計学,49-50pp.など参照して下さい.この本は読者・分析対
象が限定されないので,関連の程度が分析対象や目的によって異なること
を述べています.

では上記のような目安の表が常に間違いかというと,それは違います.

はじめて黒板に相関係数の式を書かかれ,意味を説明された学生が次に考
えることは「じゃあどのくらいの値ならどのくらいの関係なんだ?」とい
う自然な疑問です.それに対して「対象・目的によって異なる」という正
確な表現では不親切なのです.学生は混乱し,概念の理解が不十分になる
可能性が多分にあるのです.

「調査法講義」執筆コンテの立場は,学生がそれ以前に第2章から第6章で
項目作成方法を学んでいるのですから,5件法や7件法でアンケートによる
意識調査を行うことを(非常に限定された状況であることを,学習者の立
場を)暗黙に仮定しています.その立場で,関係の強さの目安を表形式で
示しておくことは実は大切なことなんです.学習がアンケート調査という
限定された状況に埋め込まれている訳です.

>ある研究分野では弱い相関と判断する値を他の研
>究分野では強い相関があるとしてしまうような、同じ標本数で同じ相関係数の
>値を各研究目的毎に表現が変わることは問題である。

研究対象・目的が異なれば,関連の評価の表現は変わるのが自然ですから
これは,実は,まったく問題ないのですよ.

--
----------------------------------------------------------------------
TOYODA Hideki Ph.D., Associate Professor,     Department of Sociology
TEL +81-3-39852323 FAX +81-3-3985-2833,   Rikkyo(St.Paul's)University
toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan
----------------------------------------------------------------------

スレッド表示 著者別表示 日付順表示 トップページ

ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。