豊田@立教大学です "Haebara, T." <haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp> さんは書きました: >南風原@東大教育心理です。 >あと,可能なのは,そうした架空の(しかし具体的な)母集団を作り出すのでは >なく,得られた結果の解釈に,そのデータとは別世界の確率モデルの中で成り立 >つ事実を参考資料として利用するということです。ご質問の例なら,「比率の等 >しい2つのベルヌイ分布から,n1=108,n2=52の無作為標本をとるとき,標本 >比率の差(特定の指標で測った差)が今回のデータで得られた差を超える確率p >は,通常の有意水準よりかなり大きい」というのは事実として言えるわけです。 >このことが結果を解釈する上で何らかの意味があると判断されるなら利用すれば >よいということになります。これも,上の議論とは違う意味で hypothetical >population に基づく議論とは言えますが。 手元に正確な情報がないので,巻数,ページは示せないのですが, 教育心理学年報における貴論文を読み,おりにふれて利用しよう と心がけてきました.しかし通常,当該調査の状態が数学的な事 実からどれほど乖離しているかの明確な指針がないことがほとん どで,現実には上記のような数学的事実をなかなか調査結果の解 釈に役立てられませんでした.最近ではすこしあきらめ気味なの ですが,たとえば今回の H. MIYAOKA, MD, PhD さんが以下のように書いています: > ある雑誌に掲載された論文の中に、「ある特殊な職業に従事する者300人(男20 > 5名、女95名)の現状を調査するために、アンケート調査を行ない、回収できたの > は160名であった。その中で、仕事中に事故の危険を感じたことのある者は男性で > は108名中62名、女性では52名中31名であった。」という記載があり、危険 > を感じた者の割合に男女差がないことをいうためにカイ2乗検定がなされています。 > しかし最初の300人は極めて特殊な職種であり、研究目的からみても全数調査と理 > 解されます。 というような状況で,上記の数学的な事実を利用すると,具体的 にどのような解釈ができるのでしょうか. "Haebara, T." <haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp> さんは書きました: >ところで,差の検定のような基本的な検定の場合は,母集団と標本の関係に頭を >悩ますのに,多変量解析のような複雑な分析になると「母集団分布に多変量正規 >分布を仮定」といったことが問題になりにくいのは何故でしょうね。 2変数の場合に,平均を0に調節すると,中学で習った座標軸がかけて 4つの象限ができます.データが3つしかないとデータの無い象限が 生じます.そんなスカスカな状況では背後に仮定する分布は何でも構 いません.3変数の場合は8つ,4変数の場合は16の象限があります. 標本数が5こや6こではスカスカで分布形は問えません.20変数の 場合は象限の数は,,,2の20乗,なんと軽く1000000を越えます. したがって標本数を数千とってもスカスカです.ほとんどの象限にデ ータはありません. どうせスカスカなのだから(周辺分布を問題にするのではなく)多変 量としてそのまま利用するのであれば,4次くらいまでのモーメント がそれらしければ,「平均と分散・共分散が明示的に示されていると いう明確なメリットのある」多変量正規をイデアとして利用して構わ ないのかな,などと漠然と思っていますが,皆様いかがでしょう? -- ---------------------------------------------------------------------- TOYODA Hideki Ph.D., Associate Professor, Department of Sociology TEL +81-3-39852323 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo(St.Paul's)University toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan ----------------------------------------------------------------------
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