[fpr 1230] 心理学研究の自己点検(5)の感想

岡本安晴

岡本@金沢大学です。

  皆様、先日のRTDでは有り難う御座いました。

  さて、"[fpr 1229] 心理学研究の自己点検(5 )の感想"より:

>最後のところはどうも尻切れになっているような感が否めません。

  打ち合わせのときに、村上さんのお考えと基本的には同じであること
が分かったこと、データ分析での具体例を村上さんが御用意なさって
いたこと、私の持ち時間が苦しかったこと、のために最後に予定していた
統計法・データ分析の具体例に関するところは村上さんにお任せすることに
しました。
  村上さんの御発表を聞いていて、気になったところもあります。例えば、
尺度の水準の問題は、外れ値のような大きな値のときに気を付けなければ
ならないというお考えがあったと思いますが、尺度の水準の問題は外れ値
だからという類のものではないと思いました。
  南風原さんの反応時間・速度のパラドックスを外れ値の問題として扱う
ことには無理があります。このパラドックスは、尺度の水準の問題が明瞭に
示されている例です。


>結局、どのような尺度水準が必要なのでしょうか。

  どの尺度水準が必要かということではなく、与えられた尺度の水準が
なにであるか、もっと正確に言えば、所与の尺度に含まれている情報は
どのようなものであるか、ということを意識する必要があるということ
です。


>SD法についての言及があることを期待していたのですが、こちらは
>村上隆さんが触れてくれたの
>でま、よかったかな。村上さんの交互作用の話しはおもしろかった。
>しかし、SD法の分散分析を
>認めて、数量化3類のデータを分散分析してはいけないということに
>なるのかという疑問が残っ
>た。
>
>もう一つはリッカート尺度の場合もSD法と同じように考えていいことに
>なると考えられるが、合
>計点というものはどうなんだろうか?分布を見て尺度水準を考えて良いの
>だろうか?
>個人的には許しているのですが、厳しく見ると危ない世界という認識です。
>このあたりはどう考え
>ているの? 累積パーセンテージで得点化しているのは尺度論てきには
>どういう意味があるのか
>な?

  私が前半で扱ったscale typeはmeasurement theoryで定義されている
ものです。最後のところでは、Luce(1959,The Psychological Review,
p.83)の必ずしもmeasurement theoryに拘束されない、一般にある理論に
よって制約されるという意味でのscale typeの考え方を紹介しました。
私のSD法データの分析の場合などはこの後者の意味での尺度の水準で
考えることになります。これは、当日扱った、項目応答理論の場合と
同じです。

  論点がずれますが、Hand(1996,Journal of the Royal Statistical
Society, Series A,Pp.445-492)を読んでいますと、統計での議論では
物理量としてratio scaleであることと、それを心理量のindicatorと
して用いたときの尺度水準が混同されていることがあると思いました。


>最後に、吉野諒三さんが指摘していた、SD法の数量化3類の解の
>関係について、

  Anderson(1961,Psychological Bulletin,Pp.305-316)のFig.2で
扱われていることも上の問題に関係しています。



                                           岡本 安晴
                                           c00279 (at) simail.ne.jp


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