[fpr 1318] カイザー基準

Tokuhisa SUZUKI

鈴木@日経リサーチ です.

        Sat, 12 Dec 1998 09:53:19 +0900 の
        [fpr 1313] カイザー基準
        に関するメールにお返事します。

》いま,SPSSで因子分析を行っていて,固有値から,因子数を目安つけたいのですが
》この「カイザー基準」というのは,何なのでしょうか?
》 手元の本(柳井他1990「因子分析」朝倉書店,
》     コムリー(芝訳)「因子分析入門」サイエンス社
》     柳井1994多変量データ解析法 朝倉書店など)
》を見てみたのですが,見あたりません(乗っているのかもしれませんが)。
》どなたか分かりやすく書いてある本などご紹介いただければ
》ありがたいです。


これは「相関行列の固有値>1の個数」というありふれた基準のことですが,
Kaiser基準という言い方はひょっとしたら一般的ではないかも知れません.
Kaiserの前にGuttmanがいるためかと思います.実際,芝先生の本ではGuttman
に言及しています.

(原著を読んでいないことを告白したうえで)たぶん,Guttmanは下限だけを
指摘し,Kaiserは積極的に基準として主張したのではないかと想像します.
タイトルだけで失礼ですが,

Guttman(1954)Some necessary conditions for common factor analysis.

Kaiser(1960)The Application of electronic computers to factor analysis.
Kaiser(1960)Comments on Communalities and the umber of Factors.
Kaiser(1961)A note on Guttman's lower bound for nember of common 
factors.

Kaiserは若くしてVarimaxという大成功(1958)をしたあと,研究業績不振だっ
たようで,最後に「私にできることはこれだけだ」といってAlpha因子分析の
論文(1965)を送ってきた−−という話を池田央先生の最終講義で聞いたのです
が,この時,小生はなんだかKaiserの人生に思いを馳せて,Kiaser基準と呼ん
であげたくなったのです.かわいそうに,きっと人生最大の業績なのに,日本
では豊田さんに「Varimaxはもういらない」と言われてしまうし・・・.学者
もきつい所で仕事しているなあという思いと,若い時に成功するとろくなこと
はないのかなあという思いを馳せたのです.若くして局長賞級の特ダネをとっ
て大成しなかった新聞記者はたくさんいるし.

手元の本でKaiser基準といっているのを探しましたが,

Stevens(1996)Applied Multivariate Statistics for The Social Sciences.
( Third Edition ). L.E.A.

がありました.日本では

柏木繁男(1997)性格の評価と表現 −特性5因子論からのアプローチ−(有斐
閣)

がカイザー基準といっているのですが,「1965年に提案したものである」と解
説しているのは,柏木先生の間違いではないかと思います.


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