[fpr 1434] 因子分析と両極性

岡本安晴


  岡本@金沢大学です。

  堀さん@香川大学経済学部の「[fpr 1433] 因子分析と両極性」に
ついてのコメントです。

  私は去年の心理学会で「SD法における両極性の形容詞対を用いることの
不自然さ」について報告したりしてきていますが、その立場からのコメントで
す。

>わたしは項目の意味を明確にす
>るためにはSD法では両極であるほうがよいと考えています.

  いかなる意味での「意味」なのかが実証科学としては問題です。実証的根拠に

基づかないデータ分析者の個人的好みでは科学としては困ります。
  両極性であるということを確認するデータが必要です。

>つまり,感情の次元が両極でなく単極だというのは測定誤差によるもので
>それを修正すれば両
>極にきちんとなるというもの.

  因子分析法、あるいはSEMによる分析結果である点が問題です。
  これらのモデルは線型モデルです。最尤法を用いる場合は正規分布の
仮定があります。相関行列は線形モデルの情報を抽出します。
  以上の仮定に合わない部分は誤差となります。この歪みを含んでいる
可能性のある誤差のために分析結果が歪められていたら困ります。
  南風原さんが以前、多変量解析における仮定を満たさない場合の問題に
についてこのfprでコメントなさったことを思い出します。

  去年の心理学会でのSD法の形容詞対に関する私の報告ではクロス表で
結果を表示しました。この場合は特定のモデルを仮定する必要はありません。
両極性を疑う傾向が非線形な形で現れていました。


>経済学部の学生などもいい加減に答
>えるのでそういう使い方の方がいいかもしれない.

  「いい加減」とはどういうことか、判断の難しい問題です。

  Kirk (1995),"Experimental Design, 3rd ed.",1.6節に

    Experimenter-expectancy effect, Demand Characteristics,
    Subject-predisposition effects, Cooperative-subject effect,
    Screw you effect, Evaluation apprehension

などの注意項目があります。
  「いい加減」という印象をデータ分析者に与えるデータなら
その「いい加減」さの分析が必要でしょうし、「奇麗な」データ
のときは又それなりの注意が必要ということなのでしょう。


岡本安晴
y-okamoto (at) mbox.kudpc.kyoto-u.ac.jp
(学術情報センターのメールサービス( (at) simail.ne.jp)が
来年10月で中止になるということなので、私のメールアドレスを
大型計算機センター( (at) mbox.kudpc.kyoto-u.ac.jp)に
切り替えているところです。)





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