[fpr 1497] 多変量解析に用いられるデータについて

堀啓造

堀@香川大学経済学部です。

熊野 道子さん wrote ;

>    1.カテゴリー数が奇数で、真中(ふつう、どちらともいえない)の語句がある。
>    2.カテゴリー数が5以上
>
>また、主成分分析の説明では、「主成分分析では、5段階評価、7段階評価に主成分分
析を行うのが望ま
>しい。段階数が少ないと、分散・共分散行列あるいは相関行列の信憑性がなくなり、ま
ちがった主成分を
>発見することがある」(p147)と書かれています。
>
>4件法、6件法を用いたデータは、主成分分析、因子分析、重回帰分析など、多変量解
析には、使えない
>でしょうか?

ちょっと違うテーマでしたが,今年の日本教育心理学会大会(甲南女子大学)において,
村上隆さん@名古屋大学の小講演
「カテゴリー反応の「因子分析」−−Likert尺度は無反省な数量化か?
 日本教育心理学会第41回総会発表論文集, p93

がありました。そこでは,何件法という問題はまったく扱いませんでした。

リッカート法を因子分析で処理するのはおおむねokでしょうという話がありました。もち
ろん,無制限にかまわないという話ではなかったですが。

村上さんの場合,「因子分析」(「」つき)は,主成分分析+回転を念頭においているよ
うでした。このあたりはおそらく別の話ということでしょうが。ちなみに最尤法(ml)は多
変量正規分布の仮定がありますが,そのほかの最小自乗法(uls)などでは多変量正規分布
を前提にしていません。主成分分析も前提にはしていなはずですね(<all)。だからと
いってなんでもいいわけでもなさそうです。

このときの例として,
SAS の proc prinqual を使っていたのですがSPSSとはどうも違うようです。spss の
option categories に含まれる princals を使ってみたのですが,変数を mnom 
(multiple nominal)に割り当てると,Homals と同じ結果になるようです。固有値も変わ
りません。結果としてみごとに馬蹄形のプロットができました。

この話は数量化3類の場合は基本的に1次元を求めるものである。多次元を求める場合は
といって難しい式を出してきて,これを求めるソフトはすでにあって, SASの proc 
prinqual であるということでした。 


さて,本題の何件法が因子分析に向くかという議論は
萩生田伸子・繁桝算男 1996 順序付きカテゴリカルデータへの因子分析の適用に関するい
くつかの注意点 心理学研究、67, 1-8.
にあります。
Bentler の次の議論も参考に。
http://bama.ua.edu/cgi-bin/wa?A2=ind9701&L=semnet&F=&S=&P=3844

両者とも2,3の場合には問題があると考えているようです。


言及されていることと関連の議論は次のところにあります。

[fpr 202] Re: Likert (1996年2月)堀
[fpr 288] Re: quant 3 etc. (1996年5月)堀
[fpr 663] Re: multiple regression (1997年2月)豊田さん

http://www.nuis.ac.jp/~mat/fpr/
で探してみてください。

ps.村上隆さんの教育心理学会での発表は VelicerのMinimmum Average Partial(MAP)を
使ったものでした。これを考える最小因子数として幅をもって選ぶというものです。
MAP にも問題があることも指摘してあります。

村上隆・野上康子(1999) 心理学的個人差尺度構成のための主成分分析の使用について
(1)(2) 日本教育心理学会第41回総会発表論文集, p557-558

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