我妻則明@岩手大学教育学部と申します 非常に基本的なことですが、かねてから疑問に思っていたことを、あえてお尋ねい たします。 統計学の授業で習った時も、あるいは、どの統計学の教科書を読んでも、有意差検 定は、概略次のように説明されております。つまり、有意差検定は研究対象となる母 集団と他の比較対照となる母集団から無作為に抽出した標本を用いて、2つの標本が 同一の性質をもつ母集団から取っていた標本だと仮定して統計量を計算し、その結 果2つの標本の違いが大きい場合、つまり、起こり得るすべての標本の取り方のうち 、今回のような標本が得られる確率が極めて低い場合、最初の仮定が間違っていたと 結論し、2つの標本は性質の異なる母集団から得られたものであると考えたほうが妥 当であるというふうに理解しております。すなわち、無作為抽出を行うからこそ、確 率論的な検定ができるのですが、有意差検定を使って結論を導いている論文を読んで いると、ほとんどすべての論文は無作為抽出をしておりません。このように無作為抽 出をしていなくても、有意差検定を行えるのでしょうか。 例えば、研究者の利用できる学校の生徒を2群に分け、それら2群に何かのテストを 実施して有意差があったとかなかったとかという論文ですが、これらの2群に分けら れた学校の生徒は、日本中の学校の生徒から無作為に抽出して得られた生徒ではない ことは明らかにもかかわらず、有意差検定はできるのでしょうか。さらに、結論は、 あたかもすべての日本中の学校の生徒に、場合によっては世界中の学校の生徒に当て はまるように書かれていたりするのですが、このように結論を当てはめて記述しても よろしいのでしょうか。 非常に基本的な疑問で、何をいまさらと思われるかもしれませんが、素朴にずっと 疑問に思っていたことです。どなたか教えていただければ、幸いです。また、上記の 件について論じている本、論文をご紹介していただければ幸いです。 *************************************** 我妻則明 岩手大学教育学部障害児教育講座 〒020-8550 盛岡市上田3-18-33 e-mail: nazuma (at) iwate-u.ac.jp 電話・ファックス 019-621-6636 ***************************************
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