[fpr 1543] 基本的なことですが

岡本安晴



  岡本@金沢大学です。

  問題提起「[fpr 1542] 基本的なことですが」について
書かせて頂きます。

  3点に分けて考えてみました。

(1)数学モデルとしての統計モデル
(2)データと統計モデルの関係
(3)一般化

(1)の数学モデルとしての統計モデルでは、数学的論理の
世界での問題となります。理論的な解説書では、数学モデル
として統計モデルを設定して、統計量の分布、統計量に基づく
決定法とリスク・効用の関係などが説明されるというのが
標準的な書き方だと思います。

  数学モデルとしての統計モデルをデータの分析に用いる
ときは、(2)および(3)が問題になります。
  吾妻さんの例では、2群それぞれが対応する母集団から
の標本値であると考えるということだと思います。ここでの
母集団は統計モデルを適用するために想定されるものです。
統計的検定の結果は、この想定されている母集団についての
ものということになります。これを日本中、世界中の学校に
当てはめるのは(3)の問題です。

  (3)は、母数モデルと変量モデルの区別として統計学的
問題として考えることもできますが、科学の方法論として
考えた方がよいように思います。

  母数モデルと変量モデルの問題については

 「聴取実験データにおける統計分析・尺度」、
   日本音響学会誌、1999、Vol.55、Pp.723−729.

でも取り上げました。

  科学の方法論としては、特定のデータと統計モデルの
組み合わせで得られた結論から、実質科学的に意味のある
結論をどのように読み取るかということになります。これは
その分野の研究の文脈を含んで判断されることなので、
ケース・バイ・ケースで判断されることだと思います。
いわゆる、パラダイムの問題ともいえます。

  なお、(2)に関してですが、データと既成の統計モデルが
合わないとき、あるいは、データを母集団からの標本値と
みなさず、得られたデータのみに基づいて検定を行いたい
ときはRandomization test法の検討もよいのではと思います。
この検定法は、データ数が多いときはデータのランダムな
並べ替えという方法を用いることになりますが、このときは
有意水準の区間推定を行うこともできます。この区間推定に
ついては

「Delphiで学ぶデータ分析法」、CQ出版社、1998.

の2.4節で扱っております。


金沢大学文学部
岡本 安晴





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