[fpr 1544] 基本的なことですが

岸本淳司

岸本@慶応大です。

我妻さんの質問は非常に重要なことです。「どの統計学の教科書を読んでも...」
という現状では、日本の統計教育に重要な問題があるといわざるを得ません。
基本的なことですが、あえて書いてみます。

統計的検定のp値を確率論的に根拠づける枠組みは2つあります。
1. ランダムな標本抽出
2. ランダムな条件割付
多くの統計学の教科書では 1.の方法で検定を導入しているわけですが、心理学
の現実の場面では、主に 2.の方法を根拠として統計的検定が用いられています。
2.の方法では、被験者の集団は偏りがあってもいいのですが、(たとえばt検定
なら2つの)実験群にランダムに割り付けることが必要です。その結果得られた
p値にはちゃんと妥当性があるのですが、しかし、それは実験した集団に限ります。
ランダム割付により得た結果を一般の集団について議論する(外的妥当性の)ため
には、統計学的アプローチ以外の方法で検討しなければいけません。

我妻さんの質問に沿ってまとめると、
・ 無作為抽出を行っていなくても、無作為割付を行っていれば検定は妥当
・ 結論を一般について述べるためには統計学方法以外の検討が必要
ということになります。

この辺の議論については、Encyclopedia of Statistical Sciences の
Gary Koch が書いた項目の中に素晴らしい説明があったと記憶しています。

ξ
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