岸本@慶応大です。 我妻さんの質問は非常に重要なことです。「どの統計学の教科書を読んでも...」 という現状では、日本の統計教育に重要な問題があるといわざるを得ません。 基本的なことですが、あえて書いてみます。 統計的検定のp値を確率論的に根拠づける枠組みは2つあります。 1. ランダムな標本抽出 2. ランダムな条件割付 多くの統計学の教科書では 1.の方法で検定を導入しているわけですが、心理学 の現実の場面では、主に 2.の方法を根拠として統計的検定が用いられています。 2.の方法では、被験者の集団は偏りがあってもいいのですが、(たとえばt検定 なら2つの)実験群にランダムに割り付けることが必要です。その結果得られた p値にはちゃんと妥当性があるのですが、しかし、それは実験した集団に限ります。 ランダム割付により得た結果を一般の集団について議論する(外的妥当性の)ため には、統計学的アプローチ以外の方法で検討しなければいけません。 我妻さんの質問に沿ってまとめると、 ・ 無作為抽出を行っていなくても、無作為割付を行っていれば検定は妥当 ・ 結論を一般について述べるためには統計学方法以外の検討が必要 ということになります。 この辺の議論については、Encyclopedia of Statistical Sciences の Gary Koch が書いた項目の中に素晴らしい説明があったと記憶しています。 ξ ■ゞ(^_^) Kishimoto The opinions expressed here Keio Univ. SFC are mine and not necessarily jkishi (at) sfc.keio.ac.jp those of Keio Univ.
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