繁桝@東大駒場です. 我妻さんの基本的な疑問に対して岡本さんと岸本さんのレスポンスがありました .岸本さんの答えがおそらくオーソドックスな答えだと思います.しかし、かねて 私自身も疑問に思っていることでもあるので、考えを述べます.この後、南風原さ んのコメントもありましたが、以下のことは過去の議論を踏まえてのことではあ りません. 先ず、どの教科書にも出ていないという指摘ですが、われわれが書いたQansAとい う本では当然問題にすべきだったし、実際教育心理学会のシンポではそのことに も触れていたはずなのですが、本には答えを用意していないようです.これは今思 えば残念です. 岸本さんの答えは, random sammplingという現実の操作がなくても、random allocationがあれば、確 率変数として扱えるということのようです。やはり、どこかで、”さいころを振 る”という操作がなければ、確率変数として扱うのは不適当であるということで しょうか.そして、母集団への一般化に関しては、統計学以外の手段によるという わけです. しかし、統計学以外の手段とは何でしょうか.そして、この一般化という点にこそ、 我妻さんの疑問はあったのではないでしょうか.私の見解は以下の2点です. 1.たとえば近所の幼稚園でサンプルを取って、しかも、無作為割り当ての操作 がない観測データに対して確率変数を想定するのは、もちろん、”みなし”です. 無作為化のプロセスがなくても、このみなしが、役に立つときはあると思います. すなわち、得られたデータ以外にどのような観測値がありえたか、また、将来の 観測値はどうであろうかというときに確率変数によって、不規則な部分を取り除 いている統計モデルはありうる規則性〔パタン〕を見出すために役に立つと思い ます. 2.それではどのようにして、モデルを作るのか。それは、手許にあるデータと可 換性のある母集団を想定することです.もっと正確にいえば、パタンの部分以外、 すなわち、誤差とか残差といわれる部分、が同じ〔未だ観測されない〕データに 対して、一般化できると思います.しかも、誤差や残差が可換性を持つ場合には、 統計的に扱いやすい独立同一分布〔iid〕が仮定できます.
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