湯浅秀道@名古屋市立城北病院口腔外科(MXE05064 (at) nifty.ne.jp)です。 以前、心理学のどの学会か忘れましたが、話題になったことですね。 橘先生(統計的検定の誤用と弊害、を書かれた先生)の問題提起もあったと思いま す。 実は、最近医学統計の分野でも話題になりました。 そこで、僕は、連続サンプリングなる概念を書きました。 それを訂正して書きますと、 無作為抽出は、学級での研究や医学研究では無理なのは、皆さんがわかっている事で 暗黙の合意です。学校、学級、病院などでの対象の抽出は、日本語では、折笠先生の 本にちょっとさわりがあるのと、Hulleyの本に記載してあるだけです。Hulleyは、抽 出の章で、連続抽出を定義しています。これ以外では、いろいろな統計の本を見まし たがないようです。この連続抽出は、無作為抽出ができない場合に使われます。問題 はあるようですが、作為的でない唯一の保証です。 そして、丹後先生の「統計学のセンス」ISBN4-254-12751-0の文章を紹介します。 p28ー30、チョッと省略してます。 処理の無作為割付を実施する事により処理効果の差を統計的に推測できる条件が整う のである。その手順は次の通りとなる。 1)試験対象とする患者の集まり、母集団、を定義しました。 2)一般に母集団から標本を無作為に抽出することは不可能である。・・・省略・・ ・したがって、偏った標本であるために母集団の特性Θを統計学的に「推定」使用と しても、未知のバイアスが生じ推定する事は意味がない。 3)しかし、実験・試験の目的は母集団特性の推定にあるのではなく、処理効果の 「比較」があるので、統計学的に「比較」できる環境を整えてあげればよい。・・・ ・省略*・・・・このように、無作為割付による「確率化」こそが、交絡を確率的に 防ぎ、統計学的検定・推測の適用を保証するのである。 省略*の部分は大切ですが、僕が丸写しするのも芸がないですし、簡単に説明する能 力もないので省きました。この文には前後の本文の流れはカットされていますので、 注意して読んで下さい。 また、医学統計のMLでは、大橋先生がやはり、「通常の統計学の教科書には、t検定 の妥当性は母集団の正規性と無作為抽出による、という記載がありますが、ランダム 化していればこの前提は不要です。t検定はノンパラメトリックな並べ替え検定の良 い近似となりますので、妥当性、すなわち第一種の過誤は(近似精度を除いて)常に 保証されるのです。」と述べています(MedStat707発言より、大橋先生の許可を得て いますが、もともとはもう少し長い文であったことと、ある質問の回答であり、今回 の質問ではないため、これだけを読んで誤解がないように注意してください)」 僕としては、橘先生の教科書を読んで育ったことと、僕たちが習ってきた、無作為抽 出が統計学的推測の基本で、t検定などで使う統計量でもこのような基本が背景にあ るような教科書がある限り、ピンときていませんが、ランダム化比較をすれば良いの だと思い込むようにしています。 折笠秀樹:母集団と標本.臨床研究デザイン 医学研究における統計入門(折笠秀樹 著)、真興交易、東京、22-23、1995 Hulley S B, Newman T B & Cummings S R: Getting started. Designing Clinical Research an epidemiologic approach (Hulley S B, Cummings S R ed), Williams & Wilkins, USA, 5- 11, 1988 (医学研究のデザイン 研究の質を高める疫学的アプ ローチ(木原正博監訳)、医学書院エムワイダブリュー、東京、1997) ---☆iModeでメール・アンケート調査推進中。☆----- 研究のためのアンケート調査 http://member.nifty.ne.jp/YUASA/imode.htm Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Nagoya City Jyohoku Munincipal Hospital. tel +81-(0)52-991-8121 fax +81-(0)52-916-2038 email: MXE05064 (at) nifty.ne.jp ---by OutlookExpress5.0------------------------
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