岡本@金沢大学です。 湯浅秀道@名古屋市立城北病院口腔外科さんより: >2)一般に母集団から標本を無作為に抽出することは >不可能である。・・・省略・・ >・したがって、偏った標本であるために母集団の >特性Θを統計学的に「推定」使用と >しても、未知のバイアスが生じ推定する事は意味がない。 >3)しかし、実験・試験の目的は母集団特性の >推定にあるのではなく、処理効果の >「比較」があるので、統計学的に「比較」できる >環境を整えてあげればよい。 心理学においては、「推定」に意味があり、「比較」は それに比べると弱いと思います。「推定」を正当化する 方法と論理が必要なのです。 有意水準が1%、あるいは0.1%で差が認められても、 その差が全変動量の数%のものであれば、残り90%以上の 変動量は説明できません。まずデータの大勢を説明する 要因を問題にする必要があります。 ある要因がどの程度現象の変動に関わっているのかを 調べるときは、「推定」が求められます。単に、違いが あるという「比較」では、森全体を見ずに一本の木の 枝葉を問題にしているに過ぎないということになる 危険があります。 上のことにも関連するのですが、南風原さんの[fpr 1546] >これは結局,注目している変数および >統計量に関して,母集団に対す >る標本の代表性ないしは一般化可能性を >評価していることになります >が,こうした評価は非統計学的なものですから, について少し論を発展させたいと思います。 「一般化可能性」の認識は本質的なことだと 思います。 物理学の実験、例えばピサの斜塔での落下実験の 結果は普遍的なものとして理解されております。 神が気まぐれであの時空間のみにおける結果として 示されたと理解するのではなく、例えば現在においても 東京タワーで同じような実験を行えば同様の結果が得られる と了解されていることだと思います。 地球上で確認された物理法則は地球外、あるいは 銀河系外においても成り立つという前提で研究が 進められております。 これらは実証的研究における特定の仮説検証が意味を もつためのいわばメタ仮説です。 統計的モデルとデータとの関係の問題と、 これらのメタ仮説の妥当性の問題は異なる レベルの問題として意識されるべきものと 思います。 「基本的なことですが」は、メタ仮説の問題として 考える方が実証科学としての心理学としてはより有意義 であると思います。 もちろん、このことは統計学的問題点に目をつぶる ということではありません。統計学的問題点は問題点として 論じられなければなりませんが、それのみに目を奪われると 実証科学としての心理学の研究法全体が見え難くなるのでは と思います。 金沢大学文学部 岡本 安晴
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