我妻@岩手大学です。 新年明けましておめでとうございます。昨年に、私が質問した素朴な疑問について、 たくさんの方がお答えくださってありがとうございます。 その中で、金沢大学の岡本様は、私の疑問を次の3点に分けて、議論していただきま した。 (1)数学モデルとしての統計モデル (2)データと統計モデルの関係 (3)一般化 この中で、(3)一般化について、岡本様は「 (3)は、母数モデルと変量モデル の区別として統計学的 問題として考えることもできますが、科学の方法論として考えた方がよいように思い ます。」と述べられています。私なりに、科学の方法論として考えると、標本により 得られた結果を一般化し、その一般性の範囲・限界を実証的に明らかにするには、標 本による追試を重ねていく必要があるように思われるのですが、いかがでしょうか。 この方法には、いくつぐらいの追試を重ねていく必要があるのかという問題が内在し ますが、それは、それぞれの研究分野によってケースバイケースになると思います。 伊藤隆二先生は、「教育心理学の思想と方法の視座 -「人間の本質と教育」の心 理学を求めて-」(「教育心理学年報」Vol.35, 127-136, 1996)の中で、「これまで 教育心理学の研究者は自然科学者の厳密性に憧れ、「対象者」についての普遍性を求 めたのであるが、同一の手続きで追試しても、先行研究から得られた結果と同一の結 果を得ることができない場合が多かった。」と述べておられます。もし、これが本当 ならば、少なくとも教育心理学においては、一般化できる研究は少ないということに なります。今まで、追試という形態の研究は、非常に価値が低く評価されてきました が、上記のように、追試は標本により得られた結果を一般化する一つの有力な方法で あり、さらに、追試により得られる結果は先行研究の結果と異なる場合が多いという ことならば、追試という形態の研究は、少なくとも教育心理学においては、今までよ りも評価され推奨されるべきものになると考えられますが、皆様はいかがお考えでし ょうか。 上記の論点についての皆様のご意見と、この論点について論じている本や論文につい て、教えていただければ幸いです。 *************************************** 我妻則明 岩手大学教育学部障害児教育講座 〒020-8550 盛岡市上田3-18-33 e-mail: nazuma (at) iwate-u.ac.jp 電話・ファックス 019-621-6636 ***************************************
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