岡本@金沢大学です。 [fpr 1563]より: > エディターのコメントの中に、Most American >psychologists prefer a strong >theoretical approach and >many (perhaps most) Japanese psychologists prefer an >emperical approach in which the facts speak for themsevfes. >という下りがありまし >た。多くの日本の学者がempiricalなのは、・・・。 > いずれにしても、行動を測定した結果がこうであった >という実績の積み重ねがもう少し >重視されて良いと思います。 データに対して面白いとか、有意義であるとか、いろいろな評価が なされます。これらの評価は何らかの基準があって可能になります。 その基準とは、評価者が有している現象に対する何らかの理論です。 無意識にせよ、データに照らし合わせる理論があって、そのデータの 面白さとかの判断が可能になります。何も理論的な枠組みがないのなら、 子どもとか素人が評価するのと同じです。専門家故にそのデータの 価値が分かるということは、データの価値評価には何らかの理論的 背景が前提となっているということです。 私は、理論的な問題意識を明瞭にすることの重要性を強調したい と思っております。 麓さんの > おもしろい問題ですので、少し紹介しておきます。この研究は、・・・ >・・・行動の恒常的な差だから性格を反映する >と考え、性格テストと結びつけたわけです。 の場合も、「おもしろい問題」という評価は、 「行動の恒常的な差だから性格を反映する」という理論(仮説)が もとになっています。 >心理学は自然科学の歴史的発展の過程を >模倣すべきであったのであり、心理学が登 >場してきたときに存在した自然科学の存在を模倣すべきではなかった そういう研究もありますが、Linkのwave theoryの本では、 psychophysicsの歴史の概説において、psychophysicsの理論的発展が 説明されています。これは「自然科学の歴史的発展の過程」と同じである と思います。psychophysicsは、実験心理学において最も歴史の古いもの とされています。また、psychophysicsにはphysicsという言葉が含まれて いますが、psychophysicsの理論はphysicsの理論とは独立したものとして それらの関係が扱われています。 「夜空を見上げて星空のすばらしさに納得できること」と 「物理学が理解できること」とは同じではありません。物理学を 理解するためには、自然の美しさの経験を豊かにすることだけでは 十分ではなく(これ自体は研究者の動機づけにおいて大切なもの ですが)、理論的な問題意識が必要です。 金沢大学文学部 岡本 安晴
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