守@信州大学です。 At 11:27 AM 00.1.7, 我妻則明 wrote: > 我妻@岩手大学です。 > > 私なりに、科学の方法論として考えると、標本により > 得られた結果を一般化し、その一般性の範囲・限界を実証的に明らかにするには、標 > 本による追試を重ねていく必要があるように思われるのですが、いかがでしょうか。 > 同感です。 4年前に『KR』の発行を思い立った理由の一つも追試の必要性でした。 以下に、『KR』第1巻0号の「発刊の目的」を引用します。 > 追試による研究結果の吟味 >一方、学会誌に掲載された論文の研究結果が真実であるかどうかは「追試」に よっ >て確認されなけれ >ばなりません。ところが、こうした「追試」研究も学会誌 に掲載されることはあり >ません。「追試」 >研究が学会誌に掲載されるためには、 元の研究結果を否定するだけでは不十分で、 >さらに新たな知見 >をつけ加えなけれ ばならないからです。そこで、学会誌に掲載された論文の研究結 >果が疑問視され る >ようなものであり、現に「追試」しても結果が再現できないような場合でも、 現行 >のシステムの中で >は、オリジナルの研究結果だけが広く世間に知られること になってしまいます。現 >実には、卒論など >で多くの「追試」がなされていると思 うのですが、そうした「追試」の結果は報告 >のしようがないの >です。こうしたフ ォローアップのためのシステムを作ることも急務ですが、現在の >学会誌のシステ ム >では難しいと思います。 「必要なものは作ろう」ということで、その後、 第1巻第5号までは以下のような形で追試報告をしていたのですが、 その後はやっていません。(息切れ、タネ切れ・・・) > 【『教心研』掲載論文「追試」結果報告】 > > ◎麻柄論文(第38巻4号1990)の追試(伊藤卒論1991): >麻柄(1990)は大学生でも持っている「チューリップにはタネはできない」という誤 >ルールを修正するに >は「タネができる」という知識だけでなく「なぜタネがあるのに球根で育てるのか >」という情報も与え >た方が効果があることを示した。伊藤卒論ではこの結果をほぼ再現し、さらに「タ >ネ無しスイカ」の話 >によっても同様の効果があることを発見した。 > ○藤生論文(第40巻1号1992)の追試(熊谷卒論1994): >藤生(1992)は、教室での挙手行動を規定する要因として、自己効力・結果予期・結 >果価値の3要因を想 >定し、小学校6年生の算数の授業で、これら3要因が独立していることを確かめよ >うとしたが、3要因 >間の分離は観測できなかった。「学級会のような場面では3要因が分離するだろう >」という藤生の予測 >を確かめるため、熊谷は小学校4年生の道徳の授業で追試を行ったが、やはり3要 >因の分離はできなか >った。これらの要因の分離はできないと考える方が正しいのかも知れない。 > ●菊野論文(第41巻1号1993)の追試(傳田卒論1996): >菊野(1993)では12場面からなる3分間程度の紙芝居を小学校2・5年生に見せ、そ >の後の質問によって >記憶の変化が生じたことが報告されている。しかし、傳田の追試では、同じ小学校 >2・6年生でも、30 >秒程度の「2人の女の子が水遊びをしている」という程度のビデオ映像の記憶では >後続質問による記憶 >の歪みは生じなかった。 今年ももうすぐ卒論の締切ですが、全国では毎年おそらく千件を越える卒論が書かれ、 その多くは先行研究の追試でしょうから、追試結果を公開するシステムさえ作れば、 追試による研究成果の確認ができるようになります。 個人の力では限界がありますから、 学会主導でこうしたシステムを作るべきだと思います。 ------------------------------------------------------------------- 守 一雄@380-8544信州大学教育学部教育科学講座(これだけで郵便が届きます。) kazmori (at) gipnc.shinshu-u.ac.jp 電話 026-238-4214(ダイヤルイン・留守電) 『DOHC』『KR』発行元 Fax 026-237-6131(直通) http://zenkoji.shinshu-u.ac.jp/mori/hp-j.html -------------------------------------------------------------------
ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。