[fpr 1573] theoreticalについて

麓信義



Yasuharu Okamoto wrote:

>
>   私は、理論的な問題意識を明瞭にすることの重要性を強調したい
> と思っております。
>
>   麓さんの
>
> > おもしろい問題ですので、少し紹介しておきます。この研究は、・・・
> >・・・行動の恒常的な差だから性格を反映する
> >と考え、性格テストと結びつけたわけです。
>
> の場合も、「おもしろい問題」という評価は、
> 「行動の恒常的な差だから性格を反映する」という理論(仮説)が
> もとになっています。
>

 その通りだと思います。ただし、性格がどのようなメカニズムや法則で行動に
関係するかは、そう簡単には語れないと思います。今の心理学研究は、それを無
理矢理にこじつけないと研究論文として認めない体制になっているのではないか
という気が少しします。この論文は、一応、新発見だからという理由で、原著で
投稿しました。原著になるとは思っていませんでしたが、審査員のコメントがど
のようになるのかを期待していました。原著にしない理由の正確なところは忘れ
ましたが、いい加減だったような気がします。この行動差を説明する理論的裏付
けがないという理由で原著にならなくとも当然と思っていたので、そのまま、資
料で掲載してもらいました。
 このあたりが、新種の生物を発見すれば論文になるという自然科学とは違うと
思います。もっとも、新種を発見しても、その分類を確定させないと現代の学会
誌では受理されないのかも知れません。でも、少なくとも、分類学的方法が確立
されていない時代には、新発見だけでも重要な業績だったはずです。現代心理学
は、方法論が確立されていると言えるのでしょうか。
 理論と実験結果の問題で別の例を示したいと思います。ある時、座って腕を前
後の動かすトラッキング課題の研究をやっていて、心理学の先生と話したことが
ありました。これをやらせると、腕だけで前後に調整する被験者もいるし、上体
を揺すって全身で調整する被験者もいるという話をしたところ、条件を規制しな
いと厳密な実験はできないのではといわれました。心理学者の発想としては当然
ですが、そもそも、自由にやらせて何通りの動かし方があるかを観察しなけれ
ば、どのような条件で実験をさせるかを決められないという問題が生じます。そ
のための観察は、通常は、業績とは認められないと思います。少なくとも、その
ような観察実験の結果を載せてくれるジャーナルはないと思います。また、その
後で、動作を規定して実験をやらせたとして、それで人間がこの動作を学習する
ことの本質を解明できるのでしょうか。
 もちろん、理論的裏付けを考えるのは大切だと思います。前回紹介した海外投
稿への審査員のコメントには、「この論文は Schmidt の Schma theory が
関連すると思われるが、関係が不明だ」ありました。この理論は、私も専門にし
ており、彼のメイン論文を主題としたレビューも何本か書いていますが、適応で
きませんでした。私としては、「自分は、少なくとも、運動学習に関しては理論
以前のデータを集める段階である」という認識と、Schmidt の理論は適用でき
ないという考察を追加して、再投稿するつもりでいます。


> >心理学は自然科学の歴史的発展の過程を
> >模倣すべきであったのであり、心理学が登
> >場してきたときに存在した自然科学の存在を模倣すべきではなかった
>
>   そういう研究もありますが、Linkのwave theoryの本では、
> psychophysicsの歴史の概説において、psychophysicsの理論的発展が
> 説明されています。これは「自然科学の歴史的発展の過程」と同じである
> と思います。psychophysicsは、実験心理学において最も歴史の古いもの
> とされています。また、psychophysicsにはphysicsという言葉が含まれて
> いますが、psychophysicsの理論はphysicsの理論とは独立したものとして
> それらの関係が扱われています。

 どのような内容の本かわかりませんのでコメントできませんが、井原 零さん
の指摘された物理学と心理学の違いを念頭に置くと、上手く表現できませんが、
自然科学の歴史的発展の過程と同じとは言えないような気がします。





>   「夜空を見上げて星空のすばらしさに納得できること」と
> 「物理学が理解できること」とは同じではありません。物理学を
> 理解するためには、自然の美しさの経験を豊かにすることだけでは
> 十分ではなく(これ自体は研究者の動機づけにおいて大切なもの
> ですが)、理論的な問題意識が必要です。
>

 人間のすばらしさを納得することと心理学が理解できることは違っており、心
理学を理解するためには理論的な問題意識が必要だというのでしょうか。「理論
的な問題意識」の内容によっては、正しい気もするし、間違っている気もします
が・・・・・・。

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Japanse  
氏名  麓 信義   弘前大学教育学部保健体育科 教授
住所    036-8560 青森県弘前市文京町1
専攻 運動・スポーツ心理学
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English
Name    Fumoto, Nobuyoshi (Professor)
Major    Psychology of sport and physical activities
Address  Department of Health and Physical Education,
        Faculty of Education, Hirosaki-University
        1, Bunkyo-cho  Hirosaki, Aomori 036-8560   Japan
http://siva.cc.hirosaki-u.ac.jp/hotai/fumoto/fumoto.htm
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tel: 0172-39-3391  fax: 0172-32-1470  E-mail: fumoto (at) cc.hirosaki-u.ac.jp

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