[fpr 1574] theoreticalについて

岡本安晴


  岡本@金沢大学です。


  麓さん@弘前大学[1573]より:
>少なくとも、分類学的方法が確立
>されていない時代には、新発見だけでも重要な
>業績だったはずです。

  「分類学的方法が確立されていない時代には」に理論的な枠組みが
なかったのかどうか、クーンのパラダイム論を考えると疑問に思います。

>・・・現代心理学
>は、方法論が確立されていると言えるのでしょうか。

  少なくとも、データの価値判断を行うのに必要な理論的枠組みは
あると思います。

>「自分は、少なくとも、運動学習に関しては理論
>以前のデータを集める段階である」という認識と

  そのようなデータをなぜ集めるのか、それを正当化する
研究目的とか理論的な枠組みが必要だと思います。

>Schmidt の理論は適用でき
>ないという考察を追加して

  審査者は、提出されたデータと当該分野の理論との関係の評価を
求めているのだと思います。心理学における理論は多数ありますが、
提出されたデータに関係して取上げるべき理論(の1つ)として
審査者はSchmidtの理論を挙げたのでしょう。Schmidtの理論は
適用できないということを説明するのでよいのではと私も思います。
審査者は読者の一人として、この理論についての投稿者の考えが
知りたいということで、読み手の関心を無視することは適当でない
と思います。


>どのような内容の本かわかりませんので

  S.W.Link,
  "The wave theory of difference and similarity",1992.

です。

>井原 零さん
>の指摘された物理学と心理学の違い

  井原さんの議論[1568]は、調査法の経験に基づいておられる
ように思います。

  以下の引用は、[1568]からのものです。

>臨床的に効果を
>もたらすとか,結果をベースに対策を立てたことが効果をもたらすと
>かで評価される

  調査法の場合、理論的な研究だけではなく、実際の問題に対処する
ための情報を得ることが目的であることがあります。量的にはこの
方がはるかに多い、と思います。私の勤務先でも、関係委員の人、
従ってその分野の専門家ではないが委員会として何らかの提案とその
根拠を説明しなければならないという立場の人の調査結果を見る
ことがあります(会議等の席で配布されるということです)。 この
ような場合の説明では、理論的なもの・解釈が述べられるとしても
心理学的に曖昧であっても不思議ではありません。

  井原さんが物理の方というので、私が理学部の学生として
物理学の勉強(専攻は数学でしたが)をしていたときのことを
思い出します。
  物理学だって、素人からみればいい加減なとこがあります。
  まず、質点の運動から始まるわけですが、質点というのは
点なので大きさがない。しかし、質量があるので密度は無限大。
密度が無限大のものってどんなものなのだろう。
  また、大きさがない点をどうして見ることができるのか。
  密度無限大で見ることのできないものって、幻想の存在では
ないか。
  もうちょっと現実的なこととして、棒の長さを考えてみます。
棒の端は分子が振動しているので理想的には1つの値として
確定しない、つまり、理論的に単純な量としては測定不能です。
  相対性理論の解説書を見ると、長さは基準となる棒を用いて
測るように説明されています。しかし、振動を含む棒が相手では
正確に測ろうとすると気が変になるのではと思います。心理学
ではこのようなとき、確率分布を導入してその分布の
パラメータ値(平均値など)を示します。この方が、はるかに
現実に対応しています。
  このように考えると、物理学とは幻想の学問である、
ということになってしまいます。これを使ってコンピュータが
作られ、ロケットが打ち上げられています。

  物理学は理論的には理想的な理論的存在を基にしてしている
ということなのでしょう。
  物理学的現象・研究といっても理論ばかりではないですし、
それは心理学でも同じだと思います。
  麓さんの主張はこの点に関係しているのだと思いますが。
  それなら投稿先の選択の問題ということになります。


金沢大学文学部
岡本 安晴






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