繁桝@東大駒場です。 これは反応したほうがいいかなと思ったのにぐずぐずしていたら、もう、次の話 題に移行しそうなので、書いています. 追試研究は一般化のための最適な手段だと私も思います.東北大学に勤めていたこ ろ、学部3年の特殊実験は追試でした.若いからこそ、いろいろ新しい(?)アイデ アも湧き、あれもやりたいこれもやりたいというところを禁欲的に、できるだけ 同じ条件で(!)追試をする.これは、学生指導上、大いに意味のあることだと思い ました.細谷純さんのイニシアティヴによるものでした。 レスポンスしたかったのは、このような追試研究の検索のために、全国の卒論の リストアップを考えたらどうかということに対してです.(守さんの提言.〕私は、 日本心理学会の情報化検討委員会を担当しています.HPもまがりなりにも立ち上が りましたが、この情報サービスとして、修論、博士論文のアブストラクトぐらい はと考えていましたので、卒論を含めて、委員会で検討してみます. 一つのアイデアは、NHKの”昼の憩い”の通信員のように、ボランティアを募って、 希望校のみのリストを載せるというものです.もし、そうなれば、このfprの人た ちに期待するところが大きくなります. ***** これからはテクニカルですので、興味のある方のみお読みください. (a)無作為抽出(b)無作為割り当てについて、それがあるナシで、4通りできますが、 その一つ一つに統計的な検討の違いが出てきます.(最近出た、佐伯、松原編、実 践としての統計学で、高野さんが雄弁に、無作為割り当ての必要性を書いていま す.) (a)(b)ともになしの場合の問題が最も大きいのですが、それでも統計解析を強行 するとすれば、特に、追試研究が大事になると思います.その際に上記の同じ条件 を吟味しなくてはいけません.(このfprで、不変性というタームが出てきました が、この意味でしょうか.もしそうならば、いいターミノロジーであるとは思えま せん。)しかし、同じ条件でも少しは違うし、意図的に、被験者集団を違えて実 験したいときもあるでしょう. このようなときに、共分散分析モデルを使って、一般化することが統計的にはリー ズナブルだと思います.ただし、この場合の危険性は、 (1)共分散分析的モデルの仮定に依存するところが大きい. (2)共変数の影響の調整の結果が、因果関係を正直にあらわさない.. というものでしょう。(2)は、因果関係を、割り当てを代えることの可能性を前 提とし、各処理水準と交絡しない共変数のみの調整を許容するという考え方から すれば、無作為割り当てがなく、交絡している変数の調整は因果関係ではなくな ります.(この問題は、Lord Paradoxと呼ばれます.) しかし、私は、この場合でも、診断的、予測的意味はあるだろうと思います、そ れが、ガン治療の予後について、以前書いたことのモティベーションでした。
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