岡本@金沢大学です。 岩男さん@関東学院大学のメール[fpr 1672]についてです。 最近、心理学において統計的解釈を軽視する方向に針が 振れ過ぎているように思います。皆さんはどのように 感じておられるでしょうか? >・・・つまり,統計的な解釈としては >妥当ではない(言い過ぎである,など)としても,心理学の領域知識を活用 >することによって,心理学的な解釈としては妥当であるということもあるは >ずです. 注意が必要だと思います。統計的に妥当ではないが、心理学的には 妥当だというときは、統計的解釈は何らかの統計的モデル、例えば、重回帰モデ ル、 を前提としたものなので、設定された統計モデルの心理学的妥当性を 明確に論じる必要があります。心理学的解釈と統計的解釈の妥当性の 不一致を、設定された統計モデルと心理学的モデルの不一致としてその理由を 明示する必要があると思います。 心理学的解釈は実証的証拠に基づくべきものですが、実証的証拠の1つとして 統計的証拠・解釈がある以上、統計的解釈と心理学的解釈の不一致点を解消する 理由付けを明示する必要があります。 >・・・変数間の相 >関行列および類似度が被覆度に影響するという仮定の下での構造方程式モデ >ルの結果を示します 構造方程式を設定するということと重回帰分析を行うということでは、 設定されている統計モデルは異なると考えるべきだと思います。 構造方程式で議論するのなら最初からそうするべきであると思います。 >1.私が行ったような,心理学的な知識を用いた競合仮説の排除は妥当なの >でしょうか? 類似度が被覆度に影響するという仮定を置くことで,初めて >「確証度判断では被覆度は利用されない」という心理学的解釈が可能になり >ますが,このような仮定を(ある意味勝手に)入れた上での解釈は許される >のでしょうか? そういう解釈と矛盾しない、ということだと思います。 原則論として、相関係数だけでは原因と結果について確定的なことは いえないと思います。 なお、競合仮説が重回帰分析における解釈を指しているのでしたら、 その解釈を排除するための、設定された統計モデルについての理論的な 考察を明示する必要があります。 >2.1.が妥当であるとした場合,論文では,ここまでが統計的解釈,ここ >からは心理学的解釈ときちんと書いた方がよいのでしょうか? この論文で >言えば,やはり構造方程式モデルの結果もきちんと示し,誤解のないように >すべきだったのでしょうか? 統計的解釈は心理学的解釈を行うためのデータの1つであると考えます。 生のデータの統計的分析結果というデータです。したがって、統計的分析 および統計的解釈は、心理学的考察とは異なるレベルのものとして明記 されるべきであると思います。 構造方程式を用いる場合は、同じデータに対して構造方程式の設定の 仕方はいろいろなモデルが可能ですから、結果だけではなく、用いた 構造方程式も明記する必要があります。これは、単に読み手が理解を 明確にするためだけではなく、他の人が確認のための再分析を行う ためにも必要です。 金沢大学文学部 岡本安晴
ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。