豊田@早大心理です 岩男さんにリプライします. IWAO Takumi さんは書きました: >柳井先生が指摘なさっているとおり,被覆度と確証度の相関はゼロではあり >ません.しかし,類似度が被覆度に影響を与えるという仮定を入れれば,そ >の相関は,類似度を経由した間接効果に過ぎないと考えることができると思 >います. つまり「類似度」ー>「被覆度」かつ「類似度」ー>「確証度」ですね. この場合は,間接効果とは呼ばず,通常 「類似度が被覆度に影響を与えるという仮定を入れれば,「類似度」が 「被覆度」と「確証度」の共通原因となり,「被覆度」と「確証度」の 相関は偽相関と考える(見なす)ことができる」のように記述します. >1.私が行ったような,心理学的な知識を用いた競合仮説の排除は妥当なの >でしょうか? 類似度が被覆度に影響するという仮定を置くことで,初めて >「確証度判断では被覆度は利用されない」という心理学的解釈が可能になり >ますが,このような仮定を(ある意味勝手に)入れた上での解釈は許される >のでしょうか? このメイルのように,相関行列をも同時に提示されていれば,妥当な考察が なされていると判断されます.しかし元論文にはそれがないので残念です. 統計的分析から純粋に導かれる知識,確実に排除される知識の総量は非常に 少なく,グレイゾーン(分析結果に矛盾はしないけれどユニークには導けな い知識)が多いものです.当然,実質科学的な解釈を付加して,結論を絞ら ねばなりません. 行動科学のための統計学 大山・武藤・柳井,朝倉書店 のパス解析の解説に,今回の岩男さんのロジックにとても良く似た展開が ありますので是非参考になさってください(手元にないのでページをしめ せませんが). >2.1.が妥当であるとした場合,論文では,ここまでが統計的解釈,ここ >からは心理学的解釈ときちんと書いた方がよいのでしょうか? この論文で >言えば,やはり構造方程式モデルの結果もきちんと示し,誤解のないように >すべきだったのでしょうか? SEMは一般に実質科学的(心理学的)仮定・解釈に依存する部分が多く, 全て「ここまでが統計的解釈,ここからは心理学的解釈ときちんと書」くこ とは不可能です.そういう仮定をコミコミで,全体としての適合度で判断す ることになります.この場合ははっきりかき分けない代わりに,できるだけ 自由度を大きくして,有力なライバル仮説がより適切である場合には,適合 度が下がるように(ポパー流には反証可能であるように)モデル化すること が望まれます.しかし岩男さんの例は,それができない状況なので,完全に 心理学的論理・考察・筆力によって, 『類似度こそが被覆度に影響を与えるのであり,したがって「類似度」が「 被覆度」と「確証度」の共通原因となり,「被覆度」と「確証度」の相関は 偽相関である』ことを納得・了解させる必要があります. ちなみに小生は納得・了解してます. -- -------------------------------------------------------------------------- TOYODA Hideki Ph.D., Professor, Department of Psychology TEL +81-3-5286-3567 School of Lieterature, Waseda University toyoda (at) mn.waseda.ac.jp 1-24-1 Toyama Shinjyuku-ku, Tokyo 162-8644 Japan --------------------------------------------------------------------------
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