南風原です。 市川さん@東大 wrote: > > (確証度の予測値)= 0.77**(類似度)+ 0.06(被覆度) > >という予測式が得られ,被覆度の係数0.06が有意でなかったとして,確証度 > >の判断に類似度のみが利用され被覆度は利用されていなかったとする解釈は, > >類似度と確証度の単相関係数が有意な相関を持たない場合を除いては誤りで > >ある. > > というのは、それこそ誤りではないでしょうか。 前に[fpr1674]で指摘したように,柳井論文では「確証度と相関のあるもの」 をそのまま「確証度の判断に利用されているもの」とみなす書き方がされ ています。したがって,上の文も,「偏回帰係数がゼロでも相関がゼロとは 限らない」ということを言いたいだけではないでしょうか。 書き手の中で,また書き手と読み手との間で,統計学的事実と心理学的 解釈の区別が十分には一貫していないところにも混乱の一因があるよう に思えます。 > 岡本さんの指摘にもあったように、構造方程式モデルを持ち出して因果関係 > に言及するのなら、はじめからそうするべきであったというのもその通りだ > と思いました。重回帰モデルは、因果関係の表現モデルとして見る限りは、 > 複数の独立変数がそれぞれ別個に従属変数に影響しているというものですし、 > 単なる予測を超えて因果解釈をするのにはそもそも適当ではない(解釈に即 > した形になってない)のだと私は思っています。 岩男論文の場合は,「確証度」の規定要因として「類似度」の地位が 確立しているところに「被覆度」というのが独自の貢献をするか,という 問題意識のようです。この場合は,「被覆度」から「類似度」の線形的 影響を除いた成分(「類似度」から「被覆度」を回帰推定したときの残差) と「確証度」との相関係数(部分相関係数)や,その成分から「確証度」を 回帰推定したときの回帰係数(岩男論文でなされた重回帰分析における 「被覆度」にかかる偏回帰係数と同じ)の大きさを調べるというのが自然 で,その意味で重回帰分析は適切な選択だったと思います。 ---- 南風原朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp Tel/Fax:03-5841-3920 東京大学大学院教育学研究科 (〒113-0033 文京区本郷 7-3-1)
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