[fpr 1685] 教育心理学年報の柳井先生の論文について

市川伸一

fpr:

市川です。さきほど、出掛けにあわててかいたので、不正確な表現が
ありました。

市川:
>サイエンス社の本「Q&Aで知る統計データ解析」ではまさに同じような
>状況で同じような記述を柳井さんが書いてました。ただ、そちらでは
>因果の解釈うんぬんの話はしていないので、「偏相関がゼロだからといっ
>て、箪相関がゼロでないならば、単独では予測に役立つ」という注意が
>あるだけです。それなら、なんの問題もない、「すくれた警告」なので
>す。

「偏回帰係数がゼロだからといって」です。

>南風原さんの柳井コメントに対する「好意的解釈」は、どうも理解でき
>ないのですが、これから会うので話してみます。私は、とにかく柳井コ
>メントの「である場合を除いては誤り」というところが、命題として誤
>っていると思っています。

話す機会を逸してしまいましたので、あらためて書きますと、

南風原さん(fpr1674):
>IWAO Takumi さんは書きました:
>
>> 柳井先生が書かれている「被験者が確証度の判断に類似度を利用している場
>> 合には,被覆度の利用は確証度の予測を高めるものとはならない」という統
>> 計的に正しい解釈は,
>
>これも純粋な統計学的解釈ではなく,多分に「心理学的解釈」が入っている
>のではないでしょうか。被験者が確証度の判断に類似度を「利用している」
>というのは,相関から直接言えることではないでしょうから。

市川:
>> > (確証度の予測値)= 0.77**(類似度)+ 0.06(被覆度)
>> >という予測式が得られ,被覆度の係数0.06が有意でなかったとして,確証度
>> >の判断に類似度のみが利用され被覆度は利用されていなかったとする解釈は,
>> >被覆度(に直しました)と確証度の単相関係数が有意な相関を持たない場合を除いては誤りで
>> >ある.
>>
>> というのは、それこそ誤りではないでしょうか。

南風原さん:
>前に[fpr1674]で指摘したように,柳井論文では「確証度と相関のあるもの」
>をそのまま「確証度の判断に利用されているもの」とみなす書き方がされ
>ています。したがって,上の文も,「偏回帰係数がゼロでも相関がゼロとは
>限らない」ということを言いたいだけではないでしょうか。

柳井先生が、ある従属変数と相関があるものをそのまま「利用されている
もの」などと書くでしょうか。これは、直接聞いてみるしかありませんが、
ここは、文字どおり、被験者が判断に利用しているという因果を込めて使
っているのだと思います。p。102をじっくり読んでみても、利用とい
う言葉は心理プロセスについてのかなり強い言い方にみえます。

もし、利用という言葉を南風原さんの言うような意味に使っているとする
と、「確証度の判断に類似度のみが利用され被覆度は利用されていなかっ
たとする解釈は,被覆度と確証度の単相関係数が有意な相関を持たない場
合を除いては誤りである」という文は、まるで意味のないことを言ってい
ることになりませんか。

#やっぱり、ここの真意をまず正してからのほうが、いいですね。

      ****-- 東京大学教育学研究科  市川 伸一 ------****
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