岡本@金沢大学です。 >南風原先生の御指摘の通り,「相関がある」ことと「手がかりとして利用し >ている」ことは区別すべきだと思います.私の以前のメールでも,統計的解 >釈と心理的な解釈は基本的には峻別すべきだ(構造方程式モデルのような例 >があるので,「基本的には」としますが)というのが,私の主張でした. 「構造方程式モデルのような例があるので,「基本的には」としますが」 の部分が気になり、投稿しました。 相関が因果関係を保証するものでないことは、構造方程式の場合も 基本的には同じです。相関が観測変数間の問題であり、構造方程式が 潜在変数を含むという違いはありますが、いずれも1次式で関係付け られたもので、数式として因果関係を主張するものではないという ことは同じです。相関での注意点は構造方程式の場合にも当てはまります。 次の例を見てください。 観測変数として、言語能力を測る項目が[言語1]、[言語2]、 [言語3]の3変数、身体の成長度を示す項目が[身長]、[体重]の 2変数がとられ、園児から中学生ぐらいまでのデータが集められた とします。 いま、この場合の正しい構造方程式は、言語能力を表す潜在変数 (言語能力)と、身体の成長度を表す潜在変数(身体成長)の2因子を 設定して (A) [言語1] <−− (言語能力) (B) [言語2] <−− (言語能力) (C) [言語3] <−− (言語能力) (D) [身長] <−− (身体成長) (E) [体重] <−− (身体成長) (F) (言語能力)<−−>(身体成長) であるとします。 このとき、潜在変数(身体成長)を除いた次の構造方程式 (A1) [言語1] <−− (言語能力) (B1) [言語2] <−− (言語能力) (C1) [言語3] <−− (言語能力) (D1) [身長] <−− (言語能力) (E1) [体重] <−− (言語能力) をたてたとき、(F)式によって、(D1)式、(E1)式の係数が 0でないので、[身長]と[体重]の原因として(言語能力)が主張される ことになるのではと思います。 構造方程式の場合、潜在変数の意味は観測変数との関係で推測される もので、微妙なところがあり、上の例の問題点は明らかですが、 一般論として、構造方程式だけで因果関係を主張することへの警鐘には なっていると思います。 金沢大学文学部 岡本安晴
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