鈴木@朝日新聞社です。 わかる範囲でお答えします。 >「t検定の結果、両群間の就労意欲レベルには有意な差が認められなかった・・・ > この結果から、同一組織における就労継続女性と転職した女性の就労意欲レベル > には差がないことが判明し、仮説7が支持された」 原論文を読んでいないのでこのケースに統計的検定を適用する是非は判断できません が、上記の文章の展開には違和感を覚えます。 統計的検定では、帰無仮説を棄却するにしろしないにしろ、その判断が誤りである可 能性は捨てきれません。棄却しないということは「データから判断する限りでは、母 集団において差がないという帰無仮説を否定することは出来ない」と判断したことに なります。 従って、有意な差が見られなかったからといって「差がないことが判明し」たわけで もないし、積極的に差がないという仮説が支持されたわけではありません。第2種の 誤りである可能性はもちろんあります。 > これは帰無仮説採択の検定であり 「帰無仮説採択の検定」という用語が適当かどうかはわかりませんが、「帰無仮説の もとで、実際に起きたことの生じる確率(P値)の大きさを検討する」という検定は 不自然ではありません。区間推定の裏返しです。 おっしゃっていることは、どちらが正しいかという視点からは判断できないことだと 思います。t検定を適用することに無理がないとしても、検定結果は必ず誤りである 可能性を含みます。ただ、統計学の方法は、なるべく誤りである可能性が少ないよう に体系つけられたものですから、誤差が捨てきれない以上、統計的検定を判断の一基 準とすることに問題はないでしょう。
ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。