[fpr 1755] 因子分析の単純構造(長文)

市川 雅教

市川@東京外国語大学です.

堀さんの投稿したメールを読んでいたら私の名前が
フルネームで出ていたので思わず読み直しました.
(よく考えてみたら,このメーリングリストでは,
「市川さん」といえば市川伸一さん@東大なのですね.)

柳井・高木編「多変量解析ハンドブック」の第7章
「因子分析」は随分と前に書いたものです.
しかし,だからといって,著者の責任が消滅するものでも
ないですので,記憶を手繰り寄せながら返答します.

単純構造について,因子構造行列も含めるのは,
堀さんが指摘するとおり,不適当でしょう.
これは,この本を書いたころの市川雅教さんが
斜交回転にあまり意義を認めておらず,
直交回転を念頭に置いていたためだと思います.

サーストンの単純構造の条件についてですが,
Anderson & Rubin (1956 p.122) は Thurstone (1947) の
5つの条件を紹介していますが,2番目の条件については

It should be pointed out that the desired linear 
independence is impossible because these rows have 
zero elements in a given column out of m columns 
and hence the submatirix of these rows can have 
maximum rank of m-1. 

と不適切であることを指摘しています.

ただし,この2番目の条件が,日本語の本で落とされている
条件に対応しているのかどうかは,現在手元に資料が
ないので分かりません.

いずれにしても,Thurstone の5条件は,単純構造の
定義としては不十分であり,今日では,
「サーストンはこう言った」という歴史的な意義を
持つのみと考えます.



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