[fpr 1775] きゃーるが鳴くんで

豊田秀樹

豊田@早大心理です

長いことかかった仕事が今日終わったので,久しぶりに,心も軽く♪
fprへの投稿を楽しんでいます.

吉田寿夫さんの「本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく
初歩の統計の本」p118に「きゃーるが鳴くんで雨ずらよ」に関して
「電気ショックか何かをカエル君に与えてやり,ゲロゲロと鳴かせ
ても雨は降らないはずです.「中略」気圧という第3の変数によって影
響されているために生じた疑似相関である「後略」」という記述が在り
ます.この部分に限らず,吉田さんの因果関係観は1950年代の米国の行
動科学の教科書からそのまま持ってきたような直輸入の印象があります.
教科書を離れた私自身の考えを書いてみます.

吉田さんの主張は
「気圧変化ー>カエル鳴く」
「気圧変化ー>雨」
であり,真の原因変数は「気圧」だというものです.

それでは気圧の変化は,どのように感じるのでしょうか?気圧計をみる
のでしょう.だったら耳でカエルの声を聞くのと,目で気圧計をみるのは対
等なはずです.吉田さんは「電気ショックか何かをカエル君に与えてや
り,ゲロゲロと鳴かせても雨は降らないはずです.」と言っていますが,
それなら「気圧計に細工して,急激に値を変化させても雨は降らないは
ずです.」というのと同じです.因果関係は5感を通じて「しか」了解
できないのですよ.構成概念の知覚による観測指標間の相関を疑似相関
といったらあらゆる因果関係の記述は成立たなくなります.言い換える
なら,それを認めないと全ての相関は疑似相関に成ってしまいます.
カエルと気圧計は対等ですらありません.農作業をしている人にとって
は気圧計の変化よりカエルの鳴き声のほうが役に立つからです.初歩の
統計の本として大切なこととは「「きゃーるが鳴くんで雨ずらよ」のよ
うな役に立つ因果関係を発見することが心理学でも大切である」と述べ
ることではないでしょうか?

--
--------------------------------------------------------------------------
 TOYODA Hideki Ph.D.,  Professor,                Department of Psychology
 TEL +81-3-5286-3567             School of Lieterature, Waseda University
 toyoda (at) mn.waseda.ac.jp  1-24-1 Toyama Shinjyuku-ku, Tokyo 162-8644 Japan
--------------------------------------------------------------------------

スレッド表示 著者別表示 日付順表示 トップページ

ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。