[fpr 1783] 因果の方向が逆でも

豊田秀樹

豊田@早大心理です

佐藤達哉さん:

Hidemichi Yuasa さんは書きました:
>心理学論の誕生〜「心理学」のフィ−ルドワ−ク〜
>著編者: 佐藤達哉、渡辺芳之 、尾見康博
>出版社: 北大路書房

間接引用で恐縮なのですが

http://www2.justnet.ne.jp/~shozo_owada/fieldwork.htm
における211〜212ページ 
-------------------------------------------引用ここから
佐藤[達哉氏] ぼくは、某達心理学研究(笑)という学術誌の
常任編集委員をしてたことがあるんだけれども、共分散構造分析
が使われ始めた頃は、使っている人が使い方というか内容を間違
えてることがあった。たとえば実際に測定した変数と構成概念の
間の矢印の方向っていうのか因果の方向っていうのか、それを全
く理解してないで逆に考えている人がいたりしたわけですよ。…
論文で言ってることが全然分からない。…
渡邊[芳之氏] そんなの落とせば良かったのに(笑)。
佐藤[達哉氏] ホントは落としたかったけど、他の2人のレフ
リーがほとんど手放し状態でホメてるのよ(笑)。本来なら2人
が「採択」と言っていればそのまま掲載されてしまうのだけれど
も、それだけは勘弁してほしかったので、「修正再審査」にして、
書き直してもらった。
-------------------------------------------引用ここまで

発達心理学研究(ですよね)で共分散構造分析が使われ始めた頃
は散発的ですから,数が少なく小生はそれらを全て読んでいます.
それを念頭に反論(懸念)を述べます.

結論から申し上げますと,共変動がある2つの変数の間には,
一応の理論を踏まえ(敢えて無視し)て,どちらから矢印を引
いても良いのです.実効が理論に優先することはしばしば
あることです.

たとえばランドサット(偵察衛星)のリモートセンシングがそれ
です.物理の理論からは
「戦車・核施設がある」ー>「反射波の特徴」
であることは明らかですが,実際には
「反射波(予測変数)」ー>「地上の物体(基準変数)」
と構造方程式を作ります

たとえばボイラー制御がそれです.理論的には明らかに,
「ボイラー内温度」ー>「ボイラー表面温度」
ですが,実際には測定の容易な表面温度から,ボイラー
内の温度を予測するように矢印を引きます.

心理学でもDMS4がそれです.理論的には
「病気」ー>「症状」ですが,実際には
「症状」から「病気」に矢印を引きます.それが診断です.

理論と(因果と)逆の矢印を引くことを因果関係と呼ぶか否かは,
とりあえず棚上げにしても,少なくともそれは論文のなかで奨励され
るべきです.

「某達心理学研究(笑)」とは書かずに,やはり「発達心理学研究」
と書くべきです.また共分散構造分析が使われ始めた頃は散発的です
から,数が少なく著者が実質的にほぼ特定されています.周囲の人も
気づいているのに匿名では反論できません.反論の機会を奪って,攻
撃することはアンフェアです.実際の論文名・著者名と共にfprML
に(この記事に対しての)反論を期待します.

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 TOYODA Hideki Ph.D.,  Professor,                Department of Psychology
 TEL +81-3-5286-3567             School of Lieterature, Waseda University
 toyoda (at) mn.waseda.ac.jp  1-24-1 Toyama Shinjyuku-ku, Tokyo 162-8644 Japan
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