[fpr 1787] きゃーるが鳴くんで

豊田秀樹

Toshio Yoshida さんは書きました:
>基本的には,既に南風原さんが書いてくださったように,
>「(予測の)役に立つ相関関係」を「因果関係」と呼ぶか否か
>ということがポイントかと思います

いえ,そうではありません.もし「気圧が変化した
から雨が降った」という表現が気圧計を見るという
行為を暗に含むなら,(もちろん含まざるを得ない
ので)「きゃーるが鳴くんで雨ずらよ」と同等であ
り前者を因果関係と呼ぶなら後者も呼ばねばならな
い,という主張です.


>人事担当者と親のどちらの立場でもなく,「有能な人材を育成する
>(どうしたら有能な人材を育てられるか?)」という教育実践的な(?)
>立場ないし観点も存在し,そのような観点からは,やはり
>「知能」や「経済力」といった変数は統制する必要があると思います。

御著書の基本論調である,因果関係を確認するには
観察研究より統制研究すべきという考え方は誤って
います.

「知能」100,「経済力」年収800万と統制し
て附属とそうでない進路の比較をして差が見出され
たら教育実践的な因果関係が確認されたと思います
か?

否です.「知能」100,5,「経済力」年収83
0万だったら差が見られるのか?「知能」110,
「経済力」年収780万だったら差が見られるのか
?という問いには答えられません.統制研究は統制
した変数の実験しない水準の値が変化した場合に関
して,厳密には何の知見ももたらしません.統制す
る変数は実はたくさんあるから,それらの水準が変
わった場合の影響は統制研究は,厳密には何も応え
てくれない.

観察研究は因果関係を確認するには不十分である.
因果に迫るためには第3の変数の影響は実質科学的
に考察しなければならない.

統制研究は因果関係を確認するには不十分である.
因果に迫るためには統制した変数の実験しない水準
の影響は実質科学的に考察しなければならない.

観察研究と統制研究は,イーブンです.どちらが優
れているという問題では在りません.

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 TOYODA Hideki Ph.D.,  Professor,                Department of Psychology
 TEL +81-3-5286-3567             School of Lieterature, Waseda University
 toyoda (at) mn.waseda.ac.jp  1-24-1 Toyama Shinjyuku-ku, Tokyo 162-8644 Japan
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