豊田@早大です Tomokazu HAEBARA さんは書きました: >「変数を統制する」という言葉が,「それらの変数について >特定の値に固定する」という操作に限定されて使われている >ようですが, 「本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく 初歩の統計の本」の中でもっとも頻繁に取り上げられてい たからです.また吉田さんからの質問に直接答えたかった からです. >実験研究では,「主眼となる独立変数(要因) >の各水準に被験者をランダムに割り付けることによって,そ >れ以外の変数の影響を除去する」という形の統制のほうがよ >く使われていると思います。この場合,それら多くの変数が >複雑に相関したままの観察研究より,因果関係の推論に関し >ては有利な状況が作られると考えてよいのではないですか。 ランダム割り付けは,実験に使用した正にその標本についての 考察です.別の標本に関しては,厳密には知見を何も導きません. しかも心理学研究の場合にはそれが杞憂でないことが多いのです. それでは以下のように加筆しましょう. (1)観察(相関)研究は因果関係を確認するには不十分である. 因果に迫るためには第3の変数の影響は実質科学的 に考察しなければならない. (2)統制研究は因果関係を確認するには不十分である. 因果に迫るためには統制した変数の実験しない水準 の影響は実質科学的に考察しなければならない. (3)ランダム割り付けは因果関係を確認するには不十分である. 因果に迫るためには,実験に参加しなかった被験者 で成立つかを実質科学的に考察しなければならない. 因果関係の確認に関して,観察(相関)研究の欠点を特別に 強調して説明するのは初心者教育として間違っています.決 まり文句としての手垢のついたステレオタイプをコピー・流 布しているだけです. 因果関係を確認するには統計的方法だけでは不十分である, ことを,まず教えて,色々な方法の長所と短所をバランスよ く論じるべきです.相関も統制もランダム割り付けも因果関 係に迫るための,それだけでは不十分な役割の違った道具・ 武器なのです. PS 無作為化も役割の違った道具・武器の1つです. -- -------------------------------------------------------------------------- TOYODA Hideki Ph.D., Professor, Department of Psychology TEL +81-3-5286-3567 School of Lieterature, Waseda University toyoda (at) mn.waseda.ac.jp 1-24-1 Toyama Shinjyuku-ku, Tokyo 162-8644 Japan --------------------------------------------------------------------------
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