[fpr 1805] パーシャルアウトvs固定vsランダム割付

南風原朝和

南風原@東大教育心理です。

“きゃーるが鳴くんで”の主な議論からは少し外れますが,混乱しそうな部
分の整理をしておきたいと思います。

独立変数X→従属変数Y という因果関係を確認したいとき,X,Y以外の
変数Zが問題になるケースとして,以下の2つが区別できます。
 (a) XとZとの相関(交絡)が問題になる
 (b) X→Yの関係のあり方の,Zの値による差異(XとZの交互作用)が     
     問題になる

これまでの議論で,研究の進め方として出てきたのは,
 (1) 観察(調査・相関)研究でZの(線形の)“影響”を除いた偏相関を          
     とる「パーシャルアウト」
 (2) Zの値をひとつに固定して,XとYの関係をみる「固定」
 (3) Xの水準に被験者をランダムに割り付ける「ランダム割付」
の3通りかと思います。

どの場合も,被験者はある母集団からのランダムサンプルであることも,便
宜的なサンプルであることもあります(現実には,たいてい後者)。

(a)の交絡の問題については,(1)と(3)は,(1)が特定の変数Zに注目して
その影響を除こうとするのに対し,(3)は(高野陽太郎さんの言葉を使え
ば)その他あらゆる変数について「一網打尽に」影響を除こうとする,とい
う違いがあります。ただ(3)の場合,サンプルでは,Xと他の変数との相関
は完全にはゼロにはなりません。(2)の場合は,XとZとの交絡はありませ
んが,Xの水準へのランダム割付がなければ,(1)と同様に,他の変数との
交絡の心配は残ります。

(b)の交互作用の問題については,(1)と(3)は交互作用を仮定しない,ある
いは交互作用を検討することのできないデザインになっています(ただし
(1)は,工夫によっては交互作用にも迫れる)。(2)もこれだけでは交互作
用はわかりませんが,Zの値を別の値に固定する追加研究があれば,交互作
用を調べるための材料ができます。もちろん,資源が十分あれば,
 (4) Zを第2の要因とした2要因実験をする
ことで,交互作用の検討を系統的に行い,かつXとZの交絡を排除すること
ができます。

----
南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp  Tel/Fax:03-5841-3920
東京大学大学院教育学研究科 (〒113-0033 文京区本郷 7-3-1)


スレッド表示 著者別表示 日付順表示 トップページ

ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。