[fpr 1809] 一網打尽

南風原朝和

南風原です。

吉村さんの議論とも重なる部分がありますが・・・。

データ収集の直接の対象となるサンプルとして,ランダムサンプルをとるか,
あるいは便宜的なサンプルをとるか,ということと,とったサンプルを,異な
る条件にランダムに割り付けるかどうか,ということは,操作としては独立で
すから,研究の進め方を,以下の2×2の表に分類してみることができます。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                   ランダム割付あり  ランダム割付なし
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ランダムサンプル       タイプA           タイプB
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
便宜的なサンプル       タイプC           タイプD
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

私が「現実にはほとんど便宜的なサンプル」と書いたのは,心理学の研究を
念頭においていたからで,豊田さんの言われるように,ランダムサンプルを
めざし,かなりの程度,それを実現している分野もあることは認識していま
す。

また,

> 調査研究にはランダムサンプルを念頭におく研究文化が在ります.
> 「ランダム割付」の実験研究にはランダムサンプルを念頭におく,研
> 究文化が在りません.

というのも事実だと思います。したがって,上記の表のタイプAは実際上,
非常に少ないと思います。

しかし,だからといって,ランダム割付をする実験研究の限界が,ランダム
サンプルをとらないことにある,というような主張は,上記の表の,表側の
「サンプル」要因と,表頭の「割付」要因を,ごっちゃにした(交絡させた)
議論のように思えます。上記の表はタイプAが少なく,いわばアンバランス
の形になっており,そのため,2つの要因の効果を分離して把握することが
難しい形にはなっていますが,そこはきちんと分離する必要があるでしょう。

たとえば「ランダムサンプリングという操作自体によって何がもたらされる
のか」という原理的な理解のためには,上記のAとC,およびのBとDの比
較,そして「ランダム割付という操作自体によって何がもたらされるのか」
に関しては,上記のAとB,およびCとDの比較のように,「条件を統制し
た検討」が必要なように思います。

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南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp  Tel/Fax:03-5841-3920
東京大学大学院教育学研究科 (〒113-0033 文京区本郷 7-3-1)


  

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