南風原です。 吉村さんの議論とも重なる部分がありますが・・・。 データ収集の直接の対象となるサンプルとして,ランダムサンプルをとるか, あるいは便宜的なサンプルをとるか,ということと,とったサンプルを,異な る条件にランダムに割り付けるかどうか,ということは,操作としては独立で すから,研究の進め方を,以下の2×2の表に分類してみることができます。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ランダム割付あり ランダム割付なし −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ランダムサンプル タイプA タイプB −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 便宜的なサンプル タイプC タイプD −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 私が「現実にはほとんど便宜的なサンプル」と書いたのは,心理学の研究を 念頭においていたからで,豊田さんの言われるように,ランダムサンプルを めざし,かなりの程度,それを実現している分野もあることは認識していま す。 また, > 調査研究にはランダムサンプルを念頭におく研究文化が在ります. > 「ランダム割付」の実験研究にはランダムサンプルを念頭におく,研 > 究文化が在りません. というのも事実だと思います。したがって,上記の表のタイプAは実際上, 非常に少ないと思います。 しかし,だからといって,ランダム割付をする実験研究の限界が,ランダム サンプルをとらないことにある,というような主張は,上記の表の,表側の 「サンプル」要因と,表頭の「割付」要因を,ごっちゃにした(交絡させた) 議論のように思えます。上記の表はタイプAが少なく,いわばアンバランス の形になっており,そのため,2つの要因の効果を分離して把握することが 難しい形にはなっていますが,そこはきちんと分離する必要があるでしょう。 たとえば「ランダムサンプリングという操作自体によって何がもたらされる のか」という原理的な理解のためには,上記のAとC,およびのBとDの比 較,そして「ランダム割付という操作自体によって何がもたらされるのか」 に関しては,上記のAとB,およびCとDの比較のように,「条件を統制し た検討」が必要なように思います。 ---- 南風原朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp Tel/Fax:03-5841-3920 東京大学大学院教育学研究科 (〒113-0033 文京区本郷 7-3-1)
ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。