[fpr 1810] ランダムサンプルと実験心理学

岡本安晴



 岡本@金沢大学です。

 ランダムサンプルが望ましいという理由は何でしょうか?

それは、当該の要因以外の影響を誤差項に含め、誤差項に
含められた、当該の要因以外による影響が正規分布する、あるいは
正規分布を想定した統計モデルが適用可能であるようにするため
だと思います。コントロールできない、あるいはコントロールしない
要因による影響はランダムサンプルなどによって誤差項に含めてしまう、
という点がポイントです。その意味で、「ランダムサンプル」も
「ランダム割付」も便宜的です。


「[fpr 1807] 一網打尽」に以下のように書かれています。

>「ランダム割付」の
>実験研究の場合は便宜的にもランダムサンプルではないのです.
>便宜的にも,です.必死に努力する調査研究との一番の違いです.

 何に努力しているのですか。例え、被験者が一人であっても
楽なことはありません。被験者が少ない実験は、少ない被験者でも
たいへんな労力が要るからです。反応時間のデータを1万個とる
実験を想像してください。最近は事情が変わっているようですが、
実験の場合、一人当りの実験時間が長いということは珍しいことでは
ありません。また、実験の準備も大変です。私の実験はパソコンで
自動化したものが多いのですが(質問紙を用いた研究もしていますが)、
プログラムが確定するまで何回も予備実験とプログラムの書き直しを
やります。自動化した実験ですので私自身が被験者になって実験を
体験しながらプログラムの調整をやるのですが、1回40分ぐらいの
実験でも、これを1日に数回繰り返すというのは神経がまいります。
このような(大げさに言えば身を削るような)準備の後、被験者を
探してくるのです。

さらに

>調査研究にはランダムサンプルを念頭におく研究文化が在ります.
>「ランダム割付」の実験研究にはランダムサンプルを念頭におく,研
>究文化が在りません.

また、「[fpr 1808] Re: [fpr 1807] 一網打尽」には、

>>メンタルローテーションのような心理実験をするときに,乱数
>>サイをもって役所の選挙人名簿を調べに行くような実験研究者はまずいませ
>>ん.
>と発言されておりましたが、
>内的妥当性(比較可能性)を確保するのであれば、
>乱数サイは言い過ぎの節があるものの
>乱数表により割付けられた割付表を持参して、
>選挙人名簿に当たるべきであると思います。

  数人の被験者からとったデータで十分である、ということが
了解されている場合があります。psychophysicsの実験の場合、
一人〜数人のデータが示されていればその分野の研究者は納得します。
研究のパラダイムとして確立されているということです。もちろん、
スティーブンスの実験のように個人データとプールされたデータでは
結果が異なるという批判のある場合もあります。しかし、これはこれで
そのこと自体が議論の対象となっていて、それでよいのだと思います。
「個人データとプールされたデータの関係」という研究テーマです。

 何が何でもランダムサンプルによる多人数のデータ、というのは
暴論だと思います。
 ランダムが効果をもつためには、データ数は多くないといけません。
相関係数を分析の対象とする「共分散構造モデル」を使うためには多数の
データを前提とするランダムサンプルが必要ということなのですか。


金沢大学文学部
岡本安晴




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