[fpr 1811] 一網打尽

湯浅秀道

湯浅秀道@名古屋市立城北病院歯科口腔外科です。

外部妥当性と内部妥当性を最初に提唱したCampbellウオッチャーの湯浅です
(^^)。

皆様の議論、勉強になります。

それぞれの研究分野が若干違うためか、考え方というか表現法に違いがあり、さらに
勉強になっています。

議論に参加というより、横からチャチャを入れたような感想ですが、すこし発言いた
します。

吉村先生の

> 一連の議論で、
> 1) ランダムサンプリングによる外的妥当性(一般化可能性)の保証
> 2) ランダムアロケーションによる内的妥当性(比較可能性)の保証
> についてですが、この2者は完全に別個に考えなければならないと思います。

僕も、最近まではこの立場でした。でも、チョッと違っています。それは、最後に書
きます。

豊田先生が、
>は完全に過大評価です.高野陽太郎さんにとっては我田引水です。
>たとえば大学内の学生に実験をお願いしてランダム割付だけして,
>「その他あらゆる変数について「一網打尽に」影響を除」けるはずがない
>ではありませんか.たとえば「年齢」や「年収」や「知能」の影響を
>どうやって「一網打尽に」除くのですか?

吉村先生など、ランダム割付けの立場にたてば、ランダムに割付けたので、未知の交
絡因子も含めてランダムにそれぞれのアームに割り当てられているとの意味でしょ
う。しかし、実際は、そのアーム間を比較したら、偏っていたということがあるかも
しれません。でも、サンプル数が実験・研究不可能なぐらい膨大なら偏らないでしょ
うね。ですから、どちらとも言えないと思います。


吉村先生の、

> 南風原先生がここで「一網打尽」にしたのは内的妥当性に関しての
> 第3の要因の影響であると私は解釈しました。
> たしかに外的妥当性の点では、何ら保証されません。
> しかし、内的妥当性(比較可能性)が保証されれば、
> それで十分であると思います。

十分と言うのは、あくまでも内部妥当性ですよね。内部妥当性が確保されなければ、
外部妥当性を論じても、測定したそのものが間違っているのだから意味がないとの立
場でよろしいでしょうか?


> 生物統計学においては、外的妥当性と内的妥当性(比較可能性)のうち、
> 内的妥当性を重要視いたします。
> それは、この分野においては1つの研究(実験)で全ての「かた」をつけるとは
> 考えていないからです。

確かにその通りのような気もします。でも、外部妥当性がほとんどないような特殊な
対象者による臨床研究をいくら集めても、何も役に立たないとの意見はないでしょう
か?誤解しないで下さい、だから内部妥当性をないがしろにして良いとは言っていま
せん。

再度引用ですが、吉村先生の、

> それは、この分野においては1つの研究(実験)で全ての「かた」をつけるとは
> 考えていないからです。

は、最重要ポイントですね。ですから、以前本MLで追試のデーターベース作りが話題
になったと理解しています。

さて、外部妥当性と内部妥当性ですが、この2つに分けるのがもともとダメで、

外部妥当性を提唱した人も考えが変わっています。

Campbell and Stanley 1963: generalizability of the results found "to" other
populations, settings, ・・・

では、外部妥当性と内部妥当性に分けていました。

しかし、それ以降、Cookが入ってからは4つに分けます。そして、外部妥当性の定義
も若干変わりました。

Cook and Campbell 1979: "to"から"across"に変わっています。これが重要だそう
で、その後、Campbellの文献を引用するときに、1963年を引用した先生と、1979年の
を引用した人で異なってしまっています。
また、1963年は、Validityを、内部妥当性と外部妥当性に分けていたのですが、1979
年やCook, Campbell, Peracchioの1990年には、namely internal, external,
statistical conclusion, construct validityと4つに分けています。

1. Is there a relationship between the two variables? (Statistical
Conclusion Validity)
2. If there is a relationship, could it be causal or would the same
relationship have been observed in the absence of any intervention?
(Internal Validity)
3. If a causal relationship may exist, what are the particular independent
and dependent variables involved and what underlying concepts do they
represent? (Construct validity)
4. If a causal relationship is possible, how generalizable is this
relationship across persons, settings, and times? (External validity)

僕は、これに研究者の信用性なるややこしい定義を追加したほうが良いと思っている
のですが・・・。

若干、僕の趣味に論旨がズレたので、このぐらいにします。

PS:もともと、医学研究では、ランダム抽出は不可能で、連続抽出になります。心理
学の場合、教室単位での抽出に実務上なることがあります。でも、社会調査では違
い、ランダム抽出が可能になります。また、医学調査でも疫学研究で社会調査に近い
場合、ランダム抽出が可能な研究も可能です(難しいですが)。ですから、社会調査
・心理学・医学研究(臨床と基礎は別)など研究分野を分けて議論する必要がありま
す。心理学でも、医学研究に近い立場から、社会調査に近い立場まであります。これ
を同じ心理学でくくると、わからなくなるし、議論がかみ合わないと思います。





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